ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】

 ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】



ジョン「あのさあ、万次郎、ちょっと聞きたいんだけど…」

万次郎「うん、なんだい?」

ジョン「いま日本で韓国人に対するヘイトスピーチとか起きてるじゃん? 日本でナショナリズムが高まってるから、そのうち欧米人に対する反感も高まったりするのかなあ…」

万次郎「はあ? あのさあ、ジョンの読んでるニュースに何て書いてるかは知らないけど、日本人の一部が怒ってるのは、韓国と北朝鮮、あとは中国に対してだけだよ。」

ジョン「そうなの?」

万次郎「そうさ。ヤクザとか反日活動家とかと無関係な在日の人までをも対象としたヘイトスピーチは、日本人として恥ずべき行為だと思うけど、そこにはニューヨーク・タイムズなんかが決して書かない理由があるのさ。そもそも日本人がなんで怒ってるかわかる?」

ジョン「うーん、それは… 韓国人というマイノリティーに対する差別のせいかな?」

万次郎「まあ、そういうのがないとは言わない。だけど明らかに言えることは、今起きてる反韓運動は最近の韓国の態度に対する日本人のリアクションなんだ。だから君たち欧米人とは何の関係もないことなんだよ。」

ジョン「ふうん…」

万次郎「そして、そういうのが始まったきっかけも割合はっきりしてる。2002年にサッカーのワールドカップが日韓共催で行われたの覚えてる?」

ジョン「ごめん、スポーツはNBAとかMLBとかしか興味なくて…日本の野球はちょっと知ってるけど…」

万次郎「そうか。サッカーファンなら話は早いんだけどな。まあいいや。とにかく2002年に日韓の親善も兼ねて、ワールドカップをこの二国で開催したわけさ。でさ、サッカーの試合って、終わると選手同士がユニフォームを交換したりするわけ。でも韓国の選手はどこの国とも交換してもらえなかった。なんでだと思う?」

ジョン「……」

万次郎「みんな、韓国に怒ってたからさ。」

ジョン「……」

万次郎「韓国選手の悪質な反則、審判の買収、韓国人ファンのマナーの悪さ、運営のお粗末さ、なんかにね。FIFAって聞いたことある?」

ジョン「International Federation of Association Football (国際サッカー連盟)かな。」

万次郎「そう、そのFIFAが2004年に出したDVDの中に『W杯100年の10大誤審疑惑』ていうのがあったんだよ。2002年のワールドカップの際、韓国はイタリアとスペインを破って世界四強まで登り詰めたんだけど、10大誤審疑惑のうち4つまでが、この二試合からのものだったんだ」

ジョン「へえ…」

小次郎「具体的に言うと、スペイン戦では、モリエンテスの放った二本のゴールがどちらもノーゴールと判定された。結局延長が終わって0対0のままPK合戦で韓国はスペインを破ったんだが、FIFAはそのDVDの中でこの二つのノーゴールを疑わしいとしたんだね。

ジョン「じゃあ、スペインが勝っていた、ていうことだね。」

万次郎「そう。その前のイタリア戦では、1対1で迎えた延長戦の後半5分にトンマージが決めたゴールがノーゴールとなり、その後トッティが退場とされた後に、韓国がゴールを決めて勝つんだけど、このノーゴールと退場もやはりDVDの中で誤審として取り上げられた。実際この退場についてはFIFAが正式に誤審と認めている。」

ジョン「じゃあ、その試合もイタリアが勝っていた可能性が高かったというわけだね。それにしても酷いね、その審判は。どこの国の奴だい?」

万次郎「エクアドル人なんだけどね。エクアドル・リーグでも不公正な判定をして何度か出場停止になっている。FIFAはこの年のうちに説明なしに彼を国際審判から除名した。韓国イタリア戦で酷かったことは、タックルや肘打ちなど韓国選手の半ば常軌を逸したラフプレーに対して、カードはおろかファールを取ることもしなかったんだ。」

ジョン「悪質だね。」

万次郎「地面に転がるマルディーニ選手の頭を蹴ったイ・チョンスは後にラジオ番組で次のように語っている。

『もう一度やってしまおうとしたが、審判が見ているので我慢した。 マルディーニは、ぼーっとしていた。 確かに私は足元でマルディーニの頭を蹴った。しかしそれは選手生命に差し支えない、 ただ脅威を与える事が目的の高度の反則技術だった。』」


ジョン「何て言ったらいいのか! …もう、わからないよ!」


万次郎「また応援する韓国人たちのマナーも酷かったんだ。ドイツ戦では「ヒットラーの息子たちは去れ!」というプラカードを挙げたり、相手選手たちの写真を遺影の額に入れて応援した。」

ジョン「何なのだろう、その品格のなさは…」

万次郎「まあ、そういうのが彼らの感覚では普通なのさ。彼らの下品なやり方というのは、ワールドカップの前から一貫して始まっていて、例えば、海外の記者に対しては、酒と女性を供応して韓国にとって良い記事を書かせようとしている。サッカー・ジャーナリストのマーティン・ヘーゲレ氏はこう語っている。

「私はこういう汚い手段を徹底的に憎む。ジャーナリストの対する行為で、もっとも卑劣なものではないか。アルコールで酩酊させ、(女性提供の事実で)相手を脅迫する。」

ジョン「それってソ連や中国が得意としてたハニー・トラップだよね。でも政治の汚い世界じゃなくて、公平さが望まれるスポーツの世界のことなのに…」

万次郎「韓国人にとってはスポーツも汚い政治の世界と一緒なんだろうね。不思議なことは彼らにとってはこれが「正しい」ということなんだ。まあ、こういうのは山のようにあって、話し出せばきりがない。とにかくそれで世界のサッカー関係者から韓国への非難が相次いだ。次いで行われた2006年のドイツのワールドカップでは、キャンプはドイツ国外へ強いられ、どの国も親善試合を拒んだ。FIFAから韓国との親善試合を押し付けられたスウェーデンは抗議したくらいだ。」

ジョン「韓国人はちょっとは反省したかな?」

万次郎「いや、それはないね。非難されると彼らは反対に憤慨して相手を罵る。また韓国のメディアも韓国人が聞きたくないことはほとんど書かないから、閉じた情報世界の中で彼らの思いはどんどん増幅される。そういうわけで韓国国内では、世界の四強に入ったということで皆が有頂天になり酔いしれて、これを契機として世界に対してどんどん傲慢になって行ったんだ。」

ジョン「大学にも韓国人の学生が数人いるけど、彼らはそんな感じには見えないけれど…」

万次郎「日本の文化の研究に来てる子たちだろう? そういう子たちはそもそも日本の文化に興味を持っているし、開かれた目を持っているのかもしれないね。僕はよくニュースサイトにつけられた韓国人のコメントを自動翻訳で読んだりしてるけど、大多数の韓国に住んでいる韓国人がいかに閉ざされた情報空間の中で、閉ざされた思考を共有しているかがよくわかるよ。」

ジョン「ふうん、なんていうか、韓国人と日本人は随分違うんだね。」

万次郎「そうなんだよ。だけど日本人もワールドカップまでは、その違いをよくわかっていなかったんだ。正直な話、それまで日本人は韓国という国にそれほど関心を持っていなかったしね。しかしワールドカップの時には日韓親善を目的とした共催ということもあって、日本で競技場や大型スクリーンで試合を見ていた人達は皆がこぞって韓国を応援した。韓国でも当然同じことが起きていると人々は思ってたんだ。ところが韓国に観戦に行った日本人はまったく別のことをそこで目撃した。韓国では、日本の試合となると、熱狂的なまでに相手チームを応援し、日本の敗戦を祈っていたんだ。」

ジョン「日本人は韓国を良く知らなかったんだね。すぐ隣の国なのに。」

万次郎「そう、問題はまさしくそこなんだ。日本のサッカーファン達は自分たちが目にした色々な意味での韓国の異常さを、日本のマスメディアでまったく報道しないことに気がついたんだ。さっき言った異常な審判についてもテレビで目にしているのに解説者はほとんど言及しない。そこで日本のサッカーファン達は海外のニュースやサイトをソースとして、日本のマスメディアが報じないことをネットを使って情報を発信し始めた。そういう過程の中で、サッカーだけじゃなく、日本のマスメディアはとにかく韓国については悪く書かないという体質があることが誰の見にも明らかになって行ったんだ。我々が韓国について知らなかったのは、マスメディアによって目隠しされていたからだということに日本人は気がついたんだ。」

ジョン「ふうん、そういうことがあるんだね。」

万次郎「ジョンは知らないと思うけど、かつて9万人の日本にいたコリアンが北朝鮮に渡ったの知ってる?」

ジョン「北朝鮮って、あの北朝鮮かい? どうしてそんなこと…」

万次郎「当時の日本のマスメディアは北朝鮮を『地上の楽園』と言って褒めそやしたんだ。」

ジョン「スターリンの大粛清が明らかになる前のアメリカのリベラルののソ連に対する憧れみたいなもんか…」

万次郎「そう。我々も北朝鮮のことがよくわかってなかった。社会主義の大躍進で何不自由ない生活が出来ると考えて海を渡った人も多かった。」

ジョン「実際は地獄なのにね。」

万次郎「そう。だがやがて少しずつ事実が明らかになるんだ。」

ジョン「どうやってわかったの?」

万次郎「たとえば北朝鮮に渡る前に、もし酷いところだったら手紙は横書きで送るように示し合わせておくんだ。そうすると、『北朝鮮は素晴らしいところだ』という内容の手紙がすべて横書きで送られて来るんだ。」

ジョン「悲しいことだね。」

万次郎「そういうことがあってね、最初は北朝鮮を持ち上げて韓国を貶していた日本のメディアだったが、段々韓国を持ち上げるようになって行くんだ。韓国を持ち上げて日本を貶める。」

ジョン「何で日本を貶めるの?」

万次郎「それを説明すると長くなっちゃうけど、要は第二次世界大戦で負けた国、日本とかドイツとかイタリアでは、戦後になると、自分たちの国は100%間違っていた、ていう教育がなされるんだ。」

ジョン「『Loosers are always in the wrong』っていうわけだね。戦争には色んな要因があるからどちらが絶対正しいとか悪いとは一概に言えないと思うけど。」

万次郎「そう。でも『Might is right』。」

ジョン「アメリカは戦争に勝ったけど、アメリカのリベラルの中にはアメリカが悪い国だ、とアメリカを貶める人々もいるよ。」

万次郎「へえ、そうなんだ。自らの国を貶めるのは左翼の特徴かもしれないね。とにかく日本の左傾化したメディアは、それにはマスコミ労組の影響もあるんだけど、とにかく日本は悪かった、韓国には併合して申し訳なかった、ていう空気がある。一方の韓国は左右を問わず反日の国だから、そう言われると、勿論その通りだ、日本は韓国に悪いことをした、ということになり、日本の左翼言論と韓国の反日言論の間には共生関係が生まれたんだ。」

ジョン「韓国にとってはまったくありがたい話だね。」

万次郎「そう。そして日本には民団っていう在日コリアンの組織があってね。これは現在では韓国政府からお金を貰っていて、民団を運営している人々は、韓国の公務員のようなところもあるんだけど、この民団も韓国の国益に叶うようその影響力をメディアに勤める在日の人々に対して行使しているとも言われている。」

ジョン「それって外国人の違法政治活動じゃないの?」

万次郎「その辺りがどこで線引きされるか法律的なことはちょっとわからない。とにかく今までの話をまとめると、日韓ワールドカップを契機として、日本のインターネットの住人達は互いに情報を交換しながら、マスメディアが伝えないことを探す努力を始めたのさ。

万次郎「…だから、最初の話に戻すと、日本の報道を翻訳したニューヨーク・タイムズや他の英語のニュース・ソースだけを見ていたら、日本でナショナリズムが強くなっていて外国人を排斥する気運が盛り上がっているような気がするだろう? でも実際に起きていることは、それまで言論界を支配していたリベラルなメディアに対して、ある意味サイレント・マジョリティーだった人々がインターネットで情報を得て声を上げるようになってきたということなんだ。その一方で高齢者などインターネットリテラシーの低い人々はまだマスコミの情報操作の中にいる。彼らは今話して来たような韓国に関することは本を買って読まない限り、ほとんど知らないわけだ。」

万次郎「…そういったネットを通して情報を得ることを覚えた人々は、中国の勃興とそれに付随する韓国の奇妙な政治的動きに対して非常に警戒している。なぜなら日本のマスコミが日本の安全保障を考える為の情報を提供する役割をまったく果たしていないことに気がついているからだ。そういう意味では日本が保守化して来ている、というのは確かに本当だ。でもそれは急変するアジア周辺の国際政治状況のリアリズムに基づいた人々の反応だ。それに対して現実認識と危機意識の薄いリベラル・マスコミは、既得権益と外国勢力とも関係の濃い支持団体と自分達の立場を守らんが為に、そういった日本の民衆の動きを、日本人が外国人を排斥しているとか、戦争を望んでいる、とか事実にほど遠いことを捏造して攻撃しているんだ。彼らが日本国民を代弁しているわけではないんだよ。」

ジョン「ありがとう、万次郎。よくわかったよ。」

    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    ✳︎    

日本に住んでいるけれども日本語の全然読めないアメリカ人の私の義兄が、数年前に日本の国家主義者に襲われるんじゃないかと言ったことを思い出しながらこの文章を書いた。


日韓共催ワールドカップについては以下のサイトなどを参照されたし。