ジョン&万次郎3【差別と朝鮮文化2】

ジョン&万次郎3【差別と朝鮮文化2】


ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】

ジョン&万次郎2【差別と朝鮮文化1】



万次郎「(食事を終えて)ああ、喰った、喰った。さて何の話だったっけ?」

ジョン「韓国人がなぜ差別を肯定するか、それどころか、それが正しいことだとまで考えているのは何故か、という話から始まって、それを知るためには歴史的背景を知る必要があるって話になって、北朝鮮主体思想李氏朝鮮の500年の歴史と深い関わりがある、というようなところまで。」

万次郎「ああ、そうだった。じゃあまず歴史の話をする前に、朝鮮民族の民族社会学的特徴を抑えておこう。 朝鮮民族の社会を考える上でもっとも重要なアイディアは彼らが考える『血の原理』だ。」

ジョン『血の原理』?

万次郎「そう。『血の原理』、すなわち父系の血統に関する強烈な意識だ。」
   
ジョン「血統を誇る人たちならアメリカにもいるよ。アメリカのパワーエリートである東部のエスタブリッシュメントなんか特にそうだと思うけどね。」

万次郎「そうそれ。その血統。それでね、韓国人の場合は国民一人残らずその血統の世界に生きていると考えていい。一昔前までの韓国では、もし初対面の人が、たまたま同じ姓なら、お互いの本貫(姓の起源の地)を尋ね合った。そしてもし本貫も一緒なら、私は何派の二十何代目です、というような話になったもんだ。」

ジョン「それはすごいね。アメリカならお祖父さんの名前すら知らない人も結構いるよ。」

万次郎「そしてね、彼らは頻繁に親族が集まって祖先を祀る儀式を行っているんだ。旧暦元旦と中秋の年二回は四代前までのご先祖様の法事を行う。その時は、その直系親族が皆集まるのでソウルはガランとなる。この四代のご先祖様に関してはそれぞれの命日にも直系親族が集まる。またそれ以上古いご先祖様のための墓参りの日もある。」

ジョン「うわあ、いっぱいあって大変だね。日本も家族主義が強いというけど、どうなの?」

万次郎「日本にも法事はあるけど現在の日本は韓国ほどじゃない。ご先祖様を大切にするという点では韓国は大したものだよ。あと日本と韓国とでは家族制度に質的な違いがある。というのも、日本では大切なのは『イエ』なんだ。『イエ』を守ることなんだ。だからお嫁さんもイエの一員だから旦那さんと同じお墓に入る。だけど韓国ではお嫁さんは実家のお墓に入るし、姓も実家の姓を名乗る。だから日本を『イエの原理』とすると、韓国は『血の原理』なんだ。そしてこのような儀礼を通じた祖先とのコミュニケーションを通して、すべての韓国人は今でも、何百年という時代をまっすぐ貫ぬく一本の血の流れの上に、自らの存在を意識しているんだね。」

ジョン「漫画の『北斗神拳』みたいだね。」

万次郎「ところでジョン、2011年にアメリカで養子になった赤ん坊の出身国は韓国が一番多かった。韓国から沢山の赤ん坊が海外へ出て行く。何故だかわかるかい?」

ジョン「私生児に対する社会的偏見が強いから?」

万次郎「そう。そしてもう一つの理由は彼らが他人の子を養子にとる習慣がないからだ。そしたらそこで血の流れが途絶えちゃうからね。それはご先祖様に対する裏切りに等しい。畢竟、望まれずして生まれた赤ん坊が海外へ出て行くことになる。日本では他人の子でも養子に取ることがあるが、かつて併合時代に、そのことで朝鮮人の激しい怒りを買った。朝鮮人の目には犬畜生のような行状と写ったようで、当時を知る韓国人はこのことで今だに怒りを顕にする人もいるらしい。」

ジョン「本当に血にこだわるんだね。」

万次郎「韓国には『手の指は内側に曲がる』という諺がある。どういう意味だと思う?」

ジョン「一度掴んだものは放さない?」

万次郎「え? 韓国人にはそういう性格もあるかもしれないけれど、そういう意味じゃなくて、指は外側には曲がらない、五本の指のように親族は互いに助け合うもんだ、という意味だ。」

ジョン「なるほど。美しい家族愛だね。親族と言っても近い親族と遠い親族とあるけど、その辺はどうなんだろう?」

万次郎「血のつながりが濃いほど関係も濃くなるんだけど、親族の中でも一つの核と考えられるのは、さっき言ったように四世代前の祖先を単位とするグループだ。彼らは互いに助け合うチームのような存在と考えてもいいだろう。そして誰か一人が成功したら、他の人を当然助けなければならない。」

ジョン「あ、わかった。だからどの大統領も親戚に便宜をはかって、大統領を辞めた後で問題となるんだね。」

万次郎「その通り。韓国人からネポティズム(縁故主義)がなくならないのは、たとえ法には背いていても、それは民族的価値観としては正しいことだからなんだ。」

ジョン「もし便宜をはからなかったらどうなるんだろう?」

万次郎「その親戚は怒るだろうね。場合によっては刃傷沙汰とかとんでもないことになることだってあるだろうね。」

ジョン「なるほど… ややこしいね。一概に韓国の汚職を批判するわけにもいかないってことだな。」

万次郎「そして、この親族の世界の内側を「ウリ」と言い、その外側を「ナム」と言う。いわば身内と他人だ。そしてここがもっとも重要なところなんだが、韓国人にとって他人(ナム)とは、ある意味、敵と同義なんだ。」

ジョン「渡る世間は鬼ばかり、ということだな。」

万次郎「妙な言葉を知ってるね。韓国に旅行に行くとぼったくられるので有名だけど、韓国人は外国人だけでなく隙あらば韓国人からもぼったくるんだね。ここは一つ数字に語らせてみよう。2010年の韓国での詐欺の発生件数は10万人あたり417件、一方日本は29件だから、実質日本の14倍以上でこれは世界ランキングでもトップクラスだ。このように韓国人は互いに騙しあっているわけだね。」

ジョン「日本にいると人を信頼することが当たり前だけど、韓国に住んだら人を疑わないと駄目ということだな。」

万次郎「そう。だからね、日本の親は子供達に他人に迷惑をかけないことをまず教える。韓国の親は反対に子供達の心の中に強いエゴを育てる。それは韓国社会の中で生き残って行くために必要だからだ。この殺伐としたサバイバルの感覚がね、儒教よりも何よりも韓国人の根底にあるんだよ。だから生きて行くには相手を押しのけ貶めなければならない。このアイディアが韓国人の根底にあるんだ。」

ジョン「互いに信頼しあってる日本社会もある意味極端だけどね。でも他人を信頼できない社会は世界には他にもいっぱいあるんじゃないかな。」

万次郎「それはそうだ。でもアフリカとかはわからないけど、アジアの多くの地域では、殺伐とした世界があっても、その一方でイスラム教キリスト教、仏教というような、部族を越えた普遍的な協調と信頼のシステムがあって、世界を別の面から補完している。でも韓国はそれが極めて希薄なんだ。歴史的に仏教を排除したこともあってね。」

ジョン「儒教はそういう役割を果たさないの?」

万次郎「儒教の話はまた今度にしよう。今までの話をまとめてみると、まず朝鮮人にとって、血縁集団が互いに助け合う関係としてある。そして、その外側の他人とは、互いに相争い騙し合う関係だ。だから韓国という国は、極端な言い方をすると、血縁集団というチームが沢山あって、それぞれのチームが互いに競い合っているサバイバルゲームのような世界なんだ。このサバイバルゲームの世界では数が多い方が力となる。だから朝鮮人は互いに集まって住む傾向がある。併合時代の朝鮮の村はほとんど同族マウルだった。同族マウルとは一つか二つの特定の姓氏が親族組織を通して、村の運営に影響力を及ぼしているような状態だ。」

ジョン「つまり、この村は李さんばっかり、あの村は朴さんばっかりっていうこと?」

万次郎「そう。親族間のシステムがそのまま村を運営するシステムになるんだ。そして他の親族グループが村にいる場合は、自分たちで掘った井戸は彼らには使わせない、なんてこともあったようだ。」

ジョン「団結して外に向かって敵対するんだね。」

万次郎「そう。だから、いつも彼らは臨戦態勢にあると考えるとわかりやすいかもしれないね。一般に戦時には意見の統一が大切だからね。だから外に向かって対峙している時は、意見の多様さをまったく認めない。強制されるんじゃなくて自然とそうなるんだ。だから日本に関しての議論では反日でまとまり、それ以外の一切の言動を国内で認めない、ということにもなる。」

ジョン「……今までずっと話を聞いていて、僕はイスラム教徒の言う『ジャーヒリーヤ』ていう意味が初めて良くわかった気がする。」

万次郎「ムハンマド以前のアラビア世界のことだね。」

ジョン「そう。メッカやメジナのようなオアシス都市で、まともな統治機構が存在せず、部族同士が絶えず抗争を繰り広げていた時代。そこへムハンマドが登場して、初めて部族を越える普遍的価値観を提供し、人々の間に平穏が訪れたんだ。」

万次郎「イスラム教の誕生には、単に宗教的なものだけじゃなく政治的な背景もあったんだね。」

ジョン「ジャーヒリーヤというと『無明時代』っていうニュアンスがあると思う。だからイスラム教徒に対して韓国人を説明する時には、『韓国人たちは未だにジャーヒリーヤの世界に生きているんだ』って説明すればわかりやすいかもね。」

万次郎「それはどうだろうね。李氏朝鮮にしても韓国にしても、その時代のオアシス都市にはなかった、統治者や官僚など国家としての枠組みがあるからね。」

ジョン「国家としての枠組みがあっても、アフリカや中東では国政内部が部族間の非情な争いとなっている例は多々ある。そういうのを指してジャーヒリーヤと呼んでみたいんだ。」

万次郎「なら、いいかもね。「ジャーヒリーヤの時代を生きる韓国」って本のタイトルっぽいね。でもね、ジョン。アラビア半島の場合は異部族が一箇所に共住する現象が交易上の必要から生じ、オアシス都市にジャーヒリーヤ状態が生まれた。しかし朝鮮半島の場合は、一つの国の中に中国的システムを積極的に導入することによって、上からのジャーヒリーヤ化が行われたと考えることも出来るんだよ。」

ジョン「『上からのジャーヒリーヤ化』? 言葉がどんどん一人歩きするね。何だい、それは?」

万次郎「それについては水パイプでもふかしながら語ることにするか。」

ジョン「そんなの日本にあるの?」

万次郎「絨毯屋で出してくれるんだ。」

ジョン「それはくつろげて良さそうだね。」