ルトワック著『自滅する中国 』読書メモ まとめ

奥山 真司さんが翻訳したエドワード・ルトワックの『自滅する中国 』。以前ごく短いメモをとりながら読んだが、それらをまとめてみた。


--------------------読書メモ 第一章--------------------

「過去千年間において中国人が支配したのは明朝の二百年間だけ」
年号まとめ  
  916-1125 遼 (契丹
  960-1279 宋(契丹?) 
1271-1368 元(モンゴル) 
1368-1644 明(支那人
1616-1912 清(女真)

--------------------読書メモ 3 第二章--------------------

何故中国は、自らの国益を損ねるような過度な言動や行動をとるのか?  

三つの解釈 
 1 経済発展を遂げ、傲慢になった 
 2 国益よりも内部の組織力学で動いている 
 3 過度な言動に一定の効果がある

--------------------読書メモ 4--------------------

アメリカや中国のような大国は、国内事情で頭がいっぱいで外の世界が正しく見えない。このことをルトワック氏は、「巨大国家の自閉症(great-state automy)」と呼ぶ。 日本にはもっと便利な言葉がある。

「大男総身に知恵が回りかね」

--------------------読書メモ 5--------------------

現在の外交ルールの起源はローマにある。外交使節の特権や様々な法的基盤など。そこにおいては、大国も小国も形式的には対等であった。 . 翻って中国の歴史を見ると、中国が他の国と対等であったことはない。

--------------------読書メモ 6--------------------

TPP 中国の軍事的拡大の背後にあるのは経済発展。知的財産権を無視し国内産業を不当に保護するなどルールに違反してきたが世界は多めに見てきた。中国の民度が高まれば中国の膨張は収まる、とルトワックは見る。その時まで中国を経済的に封じ込めることは不可避。

--------------------読書メモ 7--------------------

世界で反感を買う中国。反感が最も高い国の一つドイツ。自国の過去の歴史と重ねて心配しているのでは?と。身の丈に見合った事をしているつもりが周囲の反応は違った。 かつて安部首相が、中国の動向をナチスのレーベンスラウム(生存圏)に例えたのと同じ発想。

--------------------読書メモ 7.2--------------------

WWI までのドイツ。あらゆる面で英を凌駕。英の大学では英文学以外は独語が必要。独が海軍を増強した時英があらゆる手段でこれを阻止。 約束されていたかに見えた独の圧倒的繁栄の未来は消えた。 戦艦を放棄するだけで良かったのだがクーデターになってた

--------------------読書メモ 8章--------------------

中国がすべきこと。軋轢を産まない程度に軍備拡張を遅らせる。人民解放軍が言うこと聞かない。解決策。党が軍を抑えられるほどの力を。あるいは反軍的民主化

--------------------読書メモ 9章--------------------

孫子の兵法の偏重。戦国時代漢民族同士の争いの中で成立。ルネッサンス期の伊に通ず。裏切り・寝返り当たり前、昨日の敵は今日の友。非漢民族に通じず徒らに脅威を煽る。挑発の目的は危機的状況を作ることで真剣な交渉に持ち込み問題を解決できるという思い込み

--------------------読書メモ 10章--------------------

誇大な思い込みとは逆に周辺民族に打ち負かされてきた歴史。
欺瞞のレトリック。
ウイグルにいたのは明を征服した満州族の兵隊。
インドがスリランカの領有を主張するのと同じ。 

<王朝サイクル> 
収入の増加と富の格差->盗賊の叛乱->新王朝->官僚の発達

--------------------読書メモ 11章--------------------

<中国への対応> 
1 複数国で対応 
2 臨時の国家グループ 
3 米中心の同盟

3はロシアの反発と中露関係の強化を生む愚策。
対抗軍事力の強化は経済の疲弊もあり困難。
核戦争の可能性は低い。
自由経済の原則を捨て経済的対応が唯一の選択肢

--------------------読書メモ 12章--------------------

官民共通する中国の「歴史的恨み」が阻む軍備縮小 
漁政、海監、海事局、人民解放軍など政府方針とは真逆の対応をする組織 
中国的戦術に対する各国の反発が「自制心」の代わりにさらなる「恨み」を増加させる負のループ

--------------------読書メモ 13章 オーストラリア--------------------

紛争に離れた地域にありながらアングロサクソン的好戦性を維持。
多くの戦争に参加したが高い代償。
早くから中国に警戒。
誤った戦争に参加しない為にも米に対する信頼を持ちつつ米に頼らない集団安全保障体制を目指し米に先んじて多極構造化を

--------------------読書メモ 13章 オーストラリア2--------------------
2009年豪越共同声明に見る安全保障の強調。
英連邦に属するマレーシアとシンガポールに対して冷戦時代に締結した取り決めは現在も生きている。
有事の際には英豪ニュージーランドによる二国の保護国化が可能。
日本への積極的働きかけ。

--------------------読書メモ 14章 日本--------------------

尖閣以降日本人の中国に対する態度は永遠に変わった(中国は気付いてない?)。
日本の軍事力を高めたい逆説的志向も。
中共の圧力に対し大企業は従属に否定的。
北方領土は諦めろ(?)、ロシアが対中の鍵。
経済封鎖をしてもロシアから資源の輸入が可。

--------------------読書メモ 15章 ベトナム--------------------

中国の態度で米越接近、気難しいマレーシアも突飛なフィリピンも反中でまとまる。
メコン開発計画と地域安全保障。 
越は三度元を撃退した。
歴史に無知な中国。
経済で他国を従属させられるという誤解。
大国の前で譲歩しない姿勢に対する傲慢な苛立ち

--------------------読書メモ 16章 韓国--------------------

徴兵制まであるのに自ら守ることを放棄。
北朝鮮の大規模侵攻を止めるのは米の役目。
小規模攻撃に対しても実際反撃らしい反撃をしていない。
恐れているのではない。
中国に抑えてもらおうと思っている。
甘えと非現実的認識に立脚する独特の安全保障感。

--------------------読書メモ 韓国2--------------------

「大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは....アメリカの役目と考えられている」 
「中国には一時的な攻撃にたいする抑止力を依存している」 
「韓国の安全保障の責任逃れをしようとする姿勢は、「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている」

--------------------読書メモ 韓国3--------------------

「中国の不法操業が拡がり、さらには同胞が殺されようとも、韓国は相変わらずいつものお気に入りの、そしてもちろん全く無害の標的に憤慨することを止めてはいない」  韓国へのアメリカの呆れと苛立ち

--------------------読書メモ 韓国4--------------------

「モンゴル人の十代の少女と韓国大使の間に起こったスキャンダルも、状況をさらに悪化させている。大使が少女を妊娠させたにもかかわらず、養育費の支払いを拒否しているからだ。」

モンゴリアンビューズ 
「日本の軍隊が復活して彼らに善悪を教えるべきであろう。」

--------------------17章 モンゴル--------------------

二つの帝国に挟まれた国。
中国が領土と主張。
露には服従の嫌な記憶。
日米韓など第三国との関係を模索。
日本、投資や友好は活発も経済不作、外務省に戦略なし。
中露対立は蒙の利益。
前哨基地として露の保護、反中同盟国から援助。
世界最大級の石炭鉱を持つも中国にノー

--------------------18章 インドネシア--------------------

中国人差別と中共への警戒。
93年ナツナ諸島近辺の領有を中国が突然主張。
津波での救援で反米感情が薄れる。
豪との防衛協力。
中国の海上通商路に圧力。
二国間関係しか想定出来ない中国的思考。
恫喝的言辞の後でも態度を柔らげれば抱き合える、という誤解。

--------------------19章 ノルウェー--------------------

劉氏のノーベル賞受賞と中国の執拗な報復。
サケを腐らせる。
スコットランド輸出出来て喜ぶ。
授賞式を欠席するよう各国大使に働きかけ。
応じたのは現旧共産国、中東国、北ア国など。
世界に反感を買い劉の名を国内外に広めた。
中国の失敗、と見る。

--------------------20章 米の対中政策1--------------------

中国の経済の促進 by財務省&ウォール街

財務省幹部は皆金融機関と関係。
中国は客、黒字から流れ込む資金が目当て。
技術流出、不当廉売、製造業の凋落気にしない、関心ない。
取締、報復出来る機関なし。
自由貿易の理念から産業省がない

--------------------20章2--------------------

国務省の対決路線

協力&封じ込め&イデオロギー闘争。
民主化へという歴史の 流れは止められない。
国際的に対抗する中国。
中国の要求は対等、しかしそれも優位になるまで。
クリントンの封じ込め論文TPPに言及。
ミャンマー西側へ傾くが中国の国力次第では

--------------------20章3 --------------------


イスラムテロリストは自ら弱体化、主敵は中国。
ソ連とのように軍備競争をすればアメリカに不利。
エアシーバトル構想に不安な同盟国。
遠くに引っ込む?どう参加すれば良い?不適当。
地経学的封じ込めは、むしろ軍備にコストをかけない時により効果的

--------------------22章--------------------

対策
中国の市場を制限
中国へ天然資源を輸出拒否
技術移転阻止

既存例
米の中国の通信機器の輸入禁止
米の政府関連の備品の輸入禁止
アルゼンチンとブラジル、中国人への土地売却の禁止
豪、中国人の鉱山獲得の禁止

成長率4%
米国債報復能力低

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その他

「(中国の)歴史の中には、互いの主権を用心しているような他国がひしめく世界で生きて行くような知恵が残されていない」