タイ反政府デモとは何だったのか 7

マイケル・ヨン氏のオンライン・マガジンからの翻訳です。


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タイ: 王様の誕生日のため、紛争は一時停止

04 December 2013

シリア内戦の調査の為、私はトルコにいる。しかしタイにおいてもまた、今は大切な時である。タイ王国についても若干の言及がなされるべきであろう。

12月5日は陛下のお誕生日である。私はアメリカ人として生まれた時から王を拒否するよう育てられてきた。これが我々の教育法であり、学校で教わるものであり、そこにはそれ相当の理由もある。

タイの王様は稀な例外である。

プミポン国王と王妃は、他の世界の指導者たちより多大な賞賛を博している。タイの人々は彼を『王様』とは呼ばずに『私の王様』と呼ぶ。それはまるで我々が『私のおじいさん』と呼ぶようなものである。プミポン国王は現代タイ人に大変深く愛されているおじいさんなのだ。

タイ王家は、女性の教育、自然保護、そして他の国であれば恐らく戦争となったであろう人々の間に、平和をもたらすことに多大な努力を費やしてきた。多くの写真の中で王様が、銃ではなくカメラを手にしていることを、私は個人的に気に入っている。

悩みの種であったケシを、コーヒーの木に、他の穀物に、あるいは売り物の花にと取り換えることに、国王のその手が決定的な働きをした。これが私がしばしば路上で花を買う理由である。

バリー・マカフリーは退役した米海軍大将である。マカフリー大将はまた元アメリカの『麻薬撲滅皇帝』でもあった。私はメキシコの事案について、及びアフガニスタンのケシに関して我々が出来ることは何かを尋ねる為に、彼のオフィスを訪ねた。彼が私に言ったことは、ケシ畑を置き換えるにあたって、タイ国王の存在が決定的に重要であったことと、国王なしにはそれは決して成し遂げることが出来なかったようだ、ということであった。

プミポン国王は、人々の信頼を受けて世の中を変えることが出来る唯一の人間である。「我々はタイ人です、タイ人はケシを育てません。我々が何か他のものを育てるお手伝いをします。」と、タイ国王と同じように言える人は、アフガニスタンにもメキシコにも世界中のどこにも存在しないのだ、とマカフリーは説明してくれた。そして勿論、それを拒む人々に対しては軍隊や警察があるのだが、この奇跡の源はほとんど王様その人の内にある。

タイに戻って私は、王様の親しい友人に会い、彼はロイヤル・プロジェクト財団の個人的なツアーをアレンジしてくれた。このツアーでわかったことは、そのケシの多くは商業用の花へと取り替えられたということだ。これが私の友人が、私がタイで花を買っているのを見る理由だ。私が花を買うのは、そうでなければケシを育てていた筈の農民が食べていけるようにだ。

だから、私を訪ねてきた友人は、「どうして路上の行商人から花を買うの?」としばしば私に尋ねる。私は、まあ聞いてよ、と言って説明する。あるものは、なら店で買いなよと言うが、私は路上の行商人の方が値段もいいし、彼らも食べていかなきゃならないからね、と答える。もし私が花を買わないと、農民はケシを育てて行商人はそれを売る。もし私が充分なだけの花を買えたら、もう一人の子は大学に行けるかもしれない。ロイヤル・プロジェクトにおいて最後のバトンを受け取るのが、私だとみなして欲しい。

私はタイ原産のコーヒーも買うが、私のひいきはアカ・ブランドで、山地民のアカの人々によって育てられているが、彼らは以前はケシを育てていた。彼らの農地を訪ねたことがある。今もなお粗野な暮らしをしているものの、そこには改善が見られ、学校もいくつかあった。アカの人々はコーヒーを飲むことすらないが、タイ政府とロイヤル・プロジェクト財団の支援で、今では多くの山地民の人々がコーヒー農家になっている。

アカ・アマ・コーヒーの共同創設者は、自分の誕生日すら知らない山地民の男性である。彼の名はリー・アユ・チュパという。彼がチェンマイのTED(訳注1)で話すのを見たことがある。彼の両親は学校に通ったことはなく、彼の村にも学校はなかった。

国王の指導の下、そういった状況は終わりを迎えた。彼のアカの村から4キロのところに学校が出来、彼は両親に尋ねた。「学校ってなあに?」彼の両親は学校が何であるか十分に知らなかったが説明を試みた。彼は読むことを習った。

今日チュパ氏は、大学を出た教育のある人物で、巾広くコーヒー・ビジネスに携わっている。彼のコーヒー豆は山地民によって育てられている。もしあのシンプルな学校がなければ、ゲリラの指導者か、大した分け前にあずかる麻薬ディーラーになっていたかもしれない。そうなる代わりに、彼はアメリカに旅立ちコーヒー焙煎の技術を学んだのだ。

こういうことは、どうしてタイの人々が深い尊敬と愛情を持って彼らの国王を崇敬するかを物語る、何千もの例のうちの幾つかに過ぎない。

だからこそ、12月5日には国王の誕生日に敬意を表する為に、すべての陣営が時間を作り出している

もちろん、12月6日になれば再び闘争が始まるだろうが、少なくとも拳を固めたり引金を引く前に、すべての人に一瞬だけ手を止めて考える猶予が生じるだろう。

私にとって、プミポン国王がマサチューセッツで生まれたことや、国王の家族が今に至るまで常にアメリカの友人であったことを言及するのは、誇らしい瞬間である。普通アメリカ人は王権というものに耐えられない。今回は上手くいっている。

もしあなたがタイに居るのなら、国王の誕生日はタイ原産のコーヒーに挑戦したり花を買うのに良い機会である。


ทรงพระเจริญ
(国王万歳!/幸せでいて下さい)
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リンク:


チェンマイのTEDでスピーチをするリー・アユ・チュパ氏

ユニークなロイヤル・プロジェクト財団

素晴らしいアカ・コーヒー

タイからトルコの私のもとへ送られた国王の賛辞(youtubeビデオ)


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元記事は以下


【訳注 1】
TED(テド、英: Technology Entertainment Design)とは、アメリカのカリフォルニア州ロングビーチ(過去にはモントレー)で年一回、大規模な世界的講演会を主催しているグループのこと。TEDが主催している講演会の名称をTED Conference(テド・カンファレンス)と言い、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう。講演会は1984年に極々身内のサロン的集まりとして始まったが、2006年から講演会の内容をインターネット上で無料で動画配信するようになり、それを契機にその名が広く知られるようになった。
(ウィキペディアより抜粋)


以下に本記事についていたコメントを訳出する。
但し、コーヒーの話とアメリカ政治の話の二つはあまり関係ないと思われたので割愛した。

 
⚫︎ ー Elijah 
マイク、真実を照らす話をありがとう。タイでの平和的な解決を祈ろう。気をつけてね、兄弟!
Murf

 
⚫︎シャム国王がご長寿であられますように — Yanisa Jacobs 
私の王様に関する正直で素晴らしい記事を書いてくれてありがとう、マイク…でもカリフォルニアに移住してもう12年になるんだけどね…私の中でタイの血はいつもフルスピードで流れてるの! この間の1月にタイに戻って、メーホンソン県のバーンラックタイ村を訪れる機会が会ったわ…村長と話す機会があって、その村がどうやって王様によって作られたか話してくれたの…グループの為に避難所を必要としている、これら中国人の為に、王様がしてあげたことを新たに一つ学べて素晴らしかったわ。一度行ってみて!!! 今彼らは自分たちの家を、雲南料理付きの旅行者用のリゾートホームに改良してる!!!

 
⚫︎ — Banjo Jones
彼らがオクラホマでそのコーヒーを売るんだったら、俺も入れてくれよ。教えてくれてありがと、マイケル。
 
 
⚫︎ありがとう — Meng
タイ国王は、タイの生活と社会をたくさん改良した。今に至るまで、彼の監督下でタイ発展の為の無数のプロジェクトがある。
王様を良く思わない人が、王様の善意を少しでも見て分かってもらえることを祈ります。
ありがとう、マイケル。敬意をこめて

 
⚫︎ありがと — Thammasak P 
マイケル、あなたは外国人としてはタイを明確に理解している、あなたの短い話はそれを示している。
とにかく、ありがとう。
国王万歳

 
⚫︎ありがとう — yenruedee 
記事をありがとう。すごく良かったわ。
 

⚫︎歓喜 — Sutheera 
とてもありがとう、マイケル。あなたの記事を愛してるわ。幸せで泣いちゃった。
 

⚫︎とってもありがとう — Achara Polyiam 
次の文が好き。
プミポン国王は現代のタイの人々に深く愛されているお祖父さんなのである。」
この王様の誕生記念日に、Achara Polyiamと私の家族は陛下の御健康と御幸福をお祈りします。
 
 
 ⚫︎— tim 
皇太子が酷いんで、憲法を改正を話してるタイの人たちがいるって聞いたよ。王位継承を阻止する方法を探してね。もしかしたら、この問題にタイでのあなたの視点から取りかかることもできるかもね。

 
⚫︎ — Suchada 
それは真実ではないわ。タイの人々はタクシン体制と、彼のネットワークと、悪い政治家たちと戦っているのよ。彼らが選挙で出てきたのは本当だけど、タクシンは自分のお金を使って何でも買うの、公平であると思われていた組織ですらね。タイの人々は戦いながら、皇太子のことなんて一言も言ってない。言ってるのは、悪い政治家のことだけ。特に、タクシンとか、妹のインラックとか、彼の奥さんとか、彼の腐敗したネットワークとか、その他もろもろ。あなたは今なんでタイの人々が立ち上がって戦ってるか、わかってんの?
タイ国民のより良き人生のために今もなお戦っているある一人のタイ人
 
 
⚫︎コップ・クン・カップ — William McKenty
みんな本当のことだ、俺は黄シャツ、王様支持。ほとんどのタイ人が持ってる王様への愛情をアメリカ人に、俺もそのうちなんだけど、説明するのはホント大変。彼は思慮深く、知的で、思いやりがある。プミポン国王の治世の王家はずっと素晴らしかったよ。
彼はまた環境問題に極めて熱心だ。君のレッドホース掘削チームの話良かった、俺はUSACEの水理地質学者だった。USEPAの為に働いてたがね、2010から2011まで二年間あそこの掘削リグと取り組んだよ、そして今じゃ知ってるように地下水がいっぱい……サワディー・カップ。
ビル
 
 
⚫︎ — Thammasak P 
ティム、タイ人として言えることだけど、皇太子問題のあなたの提案は間違ってる、何故なら、我々は最近の記事を手にしてるが、憲法はそれについてもう語っている。憲法改正の主要な課題は、より厳密な過程を必要とする選挙だ。
 
 
⚫︎ — Kajornpong Srichai 
マイケル・ヨン様
最初にあなたに誠実な敬意を払いたい。私はアメリカで学んだ。私はあなたのような(純粋な)アメリカ人に会ったことがない。あなたの記事を読んでいる間中、文字通り全身に鳥肌が立った。あなたは、最初の一文からあなたの読者の、特にタイの読者の心を掴んだ。陛下のお仕事を評価してくれて、本当にありがとう。記事の中のあなたの行動から、あなたが陛下のお仕事を本当に評価されていることがわかる。そしてもっとも心を動かされたのは、あなたがタイ語で"ทรงพระเจริญ"と書いたのを見た時である。あなたの為に訳させてもらっても構わないだろうか。それが意味するのは、国王陛下がいつまでも御長寿であられますように、ということだ。そして私の意見だが、陛下のもっとも偉大なお仕事を付け加えさせてもらっても構わないだろうか。それは "ปรัชญาเศรษฐกิจ พอเพียง" あるいは "足るを知る経済哲学"だ。最初にこれを聞いたのはゆうに10年以上前のことで、その時は持続可能性という概念はどのようなビジネスにおいても聞いたことがなかった。お金が全くなくても人々が生きて行くことが許される哲学を陛下は紹介されたのであった(タイの田舎の人々の大多数が自分の土地を持っているのだとすれば)。しかしこの哲学のもっとも偉大なことは、これが商売や誰にでも適用することができる、ということだ。その核心は、得たものよりも少なく使い、あなたが得たものに満足する、ということにある。これは誰も良いものを持ってはいけないということを意味するのではなく、それが買える余裕があれば買っても良いということなのだ。陛下の仰ったことを理解するのに、学士と修士の期間が必要であった。しかしそれは今日の私の生き方の基礎を与えてくれた。そして最後に敢えて言うが、陛下を「私の王様」と呼ぶことをしばらくやめることにした。それからは、私は陛下をこう呼ぶ。「王の中の王」と。もし私が陛下を王の中の王と呼ぶことで他の読者に混乱を引き起こしてしまったら謝りたい。私の誠実な謝罪を受けて欲しい。陛下は私にとって常に王の中の王であるという私の言葉を取り消すつもりはない。心に触れる記事にもう一度礼を述べたい。

 
⚫︎ n — 1 
私の王様を愛してます。
 
 
⚫︎あなたの記事、とても良かった — Nawee Sribhadung
あなたは、我々のほとんどが愛情を込めて行う行為について、文章にまとめ上げることが出来た、すなわち、我々の王様に対する我々の愛を表すことだ。ありがとう。
 
 
⚫︎ Great read — Pete
君が単に報告するだけではなく、文脈と歴史を与えてくれるところが好きだ。すべてのあなたの速報はある部分報道で、ある部分は歴史の授業だ。引退する年になったら、どこかで教えるべきだと思う。人々を学ぶことで興奮させるような方法で教えられる人はそんなにいない。そしてあなたはそういう才能に実に豊かに恵まれていると私は思うよ、友よ。
幸運と成功を祈る。
 

⚫︎Great journalist — Kay Rosenbaum
タイ国王と彼の愛される国について外国人のジャーナリストが書いた記事を、ついに読むことが出来たことは素晴らしい。そして普通の人々の生活を改善する為に彼が何をしたかについても言及されている。そういった普通の人々は、そうでなければ、正直な生き方を見つけたり、他の穀物を育てる方法を学ぶことはなかった……素晴らしい文章……ありがとう!
 

⚫︎ — Kathy S. 
マイケル、あなたはすごい、たくさん教えてもらったわ! 『Gates of Fire』も読み返してみて、最初読んだ時と同じくらい感動しちゃった。ホントありがとう。これらすべてが私がタイの人たちと経験したことが本当だったとあらためて確信させてくれたわ…素晴らしい人たちね。
 
 
⚫︎ — Somkiat 
「多くの写真で王様が銃ではなくカメラを手にしていることを、私は個人的に気に入っている。」
これ本当?
 
 
⚫︎ — Khonjaidee 
王様がなさっていること全ての目的はただ一つ、この微笑みの国に住む人々の為…王様を愛してます。

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マイケル・ヨン氏はアメリカの人で、独立取材を続けるジャーナリスト、コラムニストであり、また写真家でもある。2008年にNew York Times紙は、マイケル・ヨン氏のことを、最も長くイラクで戦闘部隊に従軍した作家であると紹介している。

日本では慰安婦問題で、公平な報道をする数少ない欧米人ジャーナリストの1人として知られている。

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