ジョン&万次郎7【差別と朝鮮文化6】

ジョン&万次郎7【差別と朝鮮文化6】



ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】

ジョン&万次郎2【差別と朝鮮文化1】

ジョン&万次郎3【差別と朝鮮文化2】

ジョン&万次郎4【差別と朝鮮文化3】

ジョン&万次郎5【差別と朝鮮文化4】

ジョン&万次郎6【差別と朝鮮文化5】http://namadzu.hatenablog.com/entry/2015/04/20/150344

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ジョン「今まで何度か、韓国の『ソーシャル・クライミング』とか、『社会的上昇への情熱』という言葉を万次郎は使ってきたよね。でもね、日本だって、『受験戦争』と言われる教育制度のエリート主義は昔から有名だったよ。ドイツなんかで、歴史的徒弟制度にのっとった実学的職業訓練コースと、官僚や政治家を目指すエリートコースに、小さい頃から振り分けられるのとは随分違うよね。その点日本と韓国はそんなに違うのかなあ。」

万次郎「なるほどね。アメリカから見れば、日本の教育も韓国の教育も、中央を目指すエリート主義に見えるかもね。確かに明治以降の日本の教育は、中央集権主義的道を歩んできたと思う。でもね、日本から見ると、韓国のエリート主義は極端に見えるんだね。」

ジョン「そんなもんかねえ。」

万次郎「そうだね、それじゃあ、それを説明する為に、一般の韓国人に語らせてみよう(と、iPadを取り出す)。……これは去年の暮れに、韓国のNAVERニュースに載った、金沢工科大学を紹介する記事だ。ちょっと読んで見て。」
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夕暮れが訪れる頃の午後6時、「夢考房」と呼ばれる建物に学生がちらほら集まり始めた。何でも自分が思うものを直接作ってみることができる放課後実習場である。
人力航空機(HPA)、ガソリン1Lで2000㎞以上を走る超低燃費車などだ。学生は、チームを分けてそれぞれのプロジェクトに没頭した。低燃費車の成形作業をしていた機械工学科2年生の伊藤翼(20)くんは、「毎日1日3時間以上作業している」と言った。彼の先輩たちは、自動車会社のホンダが主催した低燃費レース大会に出場して、2011年から今年まで4連続で優勝した。卒業した後、ほとんどがトヨタ・ホンダなどの屈指の自動車会社に就職する。伊藤くんは、「新しいエンジンを開発して、国際大会に出て優勝するのが夢」と語った。

金沢工大は、日本の代表的な「地方の強くて小さな大学」である。人口46万人の中小都市に位置し、周辺に大きな工業地帯もないが、この大学は今年、98.8%の就職率を記録した。就業者の半分以上が大企業に入社したり、公職に進出して就職が充実しているという評価を受けている。20年間大学を率いている石川憲一学長は、「自分で考えて(創造的な)行動をする(現場型の)技術者を育てるのが秘訣だ」と述べた。夢考房は、まさにそのような人材を育てる産室であるわけだ。

夢考房は、学生自らが出したアイデアを元に運営されている。学校は、生徒のアイデアを審査して、予算をサポートする。学生はそのお金で、夢考房の中にある自律型販売所で部品を直接購入する。学生の現実感覚を育て、部品を大切に使うようにするための措置だ。

もう一つのユニークな点は、教授やエンジニア、工場労働者が一緒に学生を指導するというものである。ここの責任者である松石正克教授は、工学博士であり、大企業の日立で30年以上ベテランエンジニアをしている。彼の学生がプロジェクトの大枠を作れば、14人の若いエンジニアが設計実務を手助けする。フライス盤などの機器の操作は、実際に生産現場で働く勤労者が訪ねてきて教えるのだ。

………実際にこの大学は、専任教員の半分が企業出身である。任用する際、博士号を持っているかどうかなどを問わない。一方の韓国は、全国の大学の工学専任教員1万5116人のうち、13.6%(2060人)が産業経験者だ。
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ジョン「なかなか良い話なんじゃないの。」

万次郎「韓国のネット上のニュースの良いところは、一般読者がコメントをつけられるようになってるとこでね、ここでは記事の内容よりも、韓国人がこの記事にどういう反応を示しているかということにに注目してみたい。韓国人たちは、韓国人同士で話している時は、意外とシビアな韓国批評家だったりするからね。」

ジョン「外国人と話をする時は違うのかい。」

万次郎「いいかい、韓国人が血縁の一族をすごく大切にすることは前に述べたよね。だから一族の中では内部批判があっても、外に対してそれを言うことは許されない。それは一族と祖先に対する裏切り行為だ。外に対してはあくまで、誇り高く一族を飾り立てて、一族の社会的地位を押し上げるよう努力しなければならない。そして韓国の民族主義は、この血族概念が拡大されたものだから、外国人に対して韓国の批判をすることは許されないんだ。」

ジョン「いついかなる時も駄目なのかい?」

万次郎「それはその場の空気にもよる。たとえば韓国人と一体一で話している時には彼から韓国批判を聞くこともあるだろう。でもね、韓国人が日本人の前で公に韓国を批判することは許されない。だから呉善花さんなんかは韓国人から殺人予告を受けることになる。」

ジョン「だから、こないだのガイドのお姉さんみたいなことになるんだね。」

万次郎「話を記事に戻すよ。金沢工科大学のユニークなエンジニア教育の話だったね。それについて、たとえば次のような韓国人のコメントがある。」

『韓国はああいうものにお金を使わない。共感14非共感2』
『エンジニアを冷遇する我が国では不可能なことである。共感8非共感1』

万次郎「共感非共感というのは、コメントを見た読者が、どちらかのボタンを押せるようになっていて、それがカウントされた数だ。」

ジョン「韓国ではエンジニアは評価されないの? サムソンとか現代自動車とか技術立国でもあるのにね。」

万次郎「ずいぶん変わったとは思うけど、伝統的にはそういう意識が強い。韓国の支配層であった両班は一切の実業というものを軽蔑したんだ。だから韓国の工業製品の基幹部品は日本の中小企業が支えている。韓国ではそういった中小企業がなかなか育たないんだ。」

ジョン「じゃあ韓国では組み立ててるだけ?」

万次郎「そこまでは言わないけど。でも組み立てに使ったりする各種ロボットもたいてい日本製だろうな。次のコメントは日系企業で働く韓国人によるもの。」

『私は今、日本関連会社に通っていますが、ここに通うようになってから、実際に日本のイメージがたくさん良くなりました。韓国は日本に学ぶ点が多い。共感14非共感1』

万次郎「そしてそのコメントにつけられたコメントがこれ。」

『日本の会社が韓国の会社と仕事をすると、韓国と韓国人のイメージが悪くなる。仕事はいい加減で、パリパリ(早く早く)で、確認メールを送らず、中間報告(プロセス)を省略して、結果だけを送ると。』

ジョン「韓国では現場でのコミュニケーション不足に問題があるみたいだね。」
あと仕事に対する姿勢の違いを指摘してるね。あと、それらは韓国人のせっかちな性格に起因するという分析だ。」

万次郎「性格についてなら次のようなコメントもある。」

『韓国人の特性は、鍋根性(一気に燃えあがり、一気に冷める)、パリパリ(速く速く)、カッとなる、遊び好き、直線的…典型的な半島の特徴である…中国は大国の特徴があって、ロシアと似ている点が多い…好むと好まざるに関わらず、ずっと日本人から学ぶべきを学ばなければならない。 勤勉さや専門性、創造性のようなものを学ばなければならない…共感15非共感4』

ジョン「自分たちをそういう風に見てるんだ。面白いね。しかしそんな性格でよく経済成長出来たもんだね。」

万次郎「日本が資金的技術的に支援してきたからね。でも彼らの強烈な虚栄心、世界から評価されたい、そのうち日本を見下したい、ていう気持ちが経済成長には随分プラスに働いただろうね。」

ジョン「あと、『半島の特徴』ていうのも始めて聞いたな。」

万次郎「彼らはイタリアやギリシャのニュースに触れる時よくそういう見方をするね。今までのコメントは韓国人の仕事に対する姿勢の自己分析だけど、次のコメントが僕がもっとも見せたかったものなんだ。」

『これはちょっとピントがずれた話かも知れないが、日本の小学生の将来の夢が、近所の花屋や近所のパン屋の主人などが1位とか2位ということに驚く。これも「ものづくり(職人)」が出てくる日本特有の教育と、職人優遇の精神が理由だと思う。韓国では想像できない将来の希望だ…国内での調査をみると、芸能人、大企業、公務員…共感7非共感1』

ジョン「韓国の小学生にとって花屋やパン屋が『想像できない将来の希望』!?  それってなんか、社会が病んでいないか?」

万次郎「なんだろうねえ。夢がないというべきか、限定された夢しかないというべきか。」

ジョン「アメリカでも『アメリカン・ドリーム』という言葉で人々の社会的上昇に対する欲望を煽るところもあるけど、夢にはもっと多様性があるけどなあ。」

万次郎「単純に言って、10人いて10人とも芸能人や大企業の社員を目指したとして、成功するのは一人ぐらいだろう。後の9人には『自激之心』が待っている。」

ジョン「『自激之心』って何?」

万次郎「韓国人がよく使う言葉で『自分の力が至らないことで陥る精神的ストレス』のこと。」

ジョン「ストレスは心の病気。やっぱり韓国社会は病を生み出すもとだよ。」

万次郎「このコメントの韓国人はまた『職人優遇の精神』が韓国で育たなかったからだと分析してるよね。日本人として言わせてもらえれば、その分析は半分正解で半分間違いだ。確かに日本では古来から技術というものを大切にしてきた伝統がある。でも江戸時代の職人気質やなんかを見ても、それは職人自身の側から、武士の価値観や商人の価値観に対する対抗的価値観として生まれてきた側面もあるんだね。彼らは職人であることに誇りを抱いていたが、その誇りは自ら勝ち取ったもので、決して支配階級の優遇から生まれたものではないんだね。」

ジョン「具体的にいうとどういうこと?」

万次郎「そうだな…  じゃ、手っ取り早く説明するために、永六輔という人が紹介してる、江戸っ子の職人言葉の例をあげてみよう。

⚫︎『お前さんは働きに来ているんじゃない。修行に来ているってことを忘れちゃいないかい?』

⚫︎『上手は下手の見本なり、下手は上手の見本なり』

万次郎「こういった言葉は明らかに武士道や仏道の影響を受けていて、技術を『道』と同様に考えていることがわかる。そうやって彼らは長い時間をかけて謙虚に腕を磨いていったんだね。」

⚫︎『オレは貧乏だ、しかし貧乏人じゃないよ』

万次郎「この言葉には、磨いた職人の腕こそを宝とする強い誇りが伺えるね。こんな風にして江戸の職人達は一方では支配者である武士の価値観を評価しながらも、それを彼らなりに消化して自分たちの価値観に作り変えた。そして大衆的気取りのなさと諧謔味を加えた彼らの言い回しは、ある面では杓子定規な武士の価値観を凌駕したとも言える。」

⚫︎『おい、若ェの!何にもできなくっていいから、せめて、元気のいい返事ができねェか』

万次郎「こんな言葉一つとっても、親方のビシッとした態度の裏に、弟子に対するいたわりの気持ちが感じられると思うけど、お武家様のしゃちほこばった言い方じゃ、同じことはとても表現できないと思うね。」

ジョン「江戸時代の職人の会話って、人生哲学の深みや言葉の巧みさにかけて、現代日本語よりはるかに優れてるんじゃないの?」

万次郎「落語なんかを聞いてるとよくそう思うね。とにかく彼らは職人であることに誇りを持ち、しかめっ面しい武士や、金銭に渋い商人達を馬鹿にしたりもしたもんだ。こういう風に、日本ではそれぞれの職種に応じて異なる価値観が発達したんだね。」

ジョン「一方の李氏朝鮮はどうだったんだろう?」

万次郎「李朝の職人や技術者たちは、実業を軽蔑する両班からは蔑まれていて、それを跳ね返すことは出来なかった。彼らが自分たちの職に誇りを持つことはなかったんだね。蔑視されていただけでなく、日本の職人たちの場合は、すぐ側にあって参考にできる価値観であった武士道や仏道のような存在が彼らにはなかったんだね。」

ジョン「それが半分正しくて半分謝りということだね。」

万次郎「そう。また李朝の強い中央集権の中にあって、ギルドのような同業組合もほとんど発達しなかったということもある。」

ジョン「じゃあ、商人たちはどうだい? 商人たちは両班に対抗する価値観を持たなかったのかい?」

万次郎「商業もあまり発達しなかったんだよ。貨幣経済が未発達ということもあったしね。」

ジョン「じゃあ、彼らの価値観はどこにあったんだろうね。」

万次郎「簡単に言ってしまうと、李朝の価値観とは両班になることだ。高い収入と特権を手に入れるためには両班になるしかなかった。この両班を目指す傾向は時代が下るほど強くなって、李朝後期の18、19世紀になると、ある意味で、すべての国民が両班を目指すようになった。両班に対する対抗的価値観といえるほどのものは、ついぞ現れなかったんだね。技術者は軽んじられた。商業行為には規制もあって大商人は育たなかった。仏教は保護を失って廃れた。仏教僧侶は賎民と同じ階級で京城市内に入ることも許されなかった。儒学者の中でもソンビとよばれるような学識ある高潔な人士は、山奥で隠遁的な生活を送ることが多かった。そしてこのように、体制に組み込まれた朱子学のみが唯一の価値観であり、そして現代の韓国社会の中においても、ひたすら両班を目指した李朝後期のエリート主義は、脈々と受け継がれているんだね。」

ジョン「なるほどね〜。この間の話では、朝鮮では元寇の時に武人政権が滅んだってことだけど、日本では朝廷を残しつつも武人政権が主になったってことだったよな。そして李朝では仏教が弾圧されたけれども、日本では儒教も仏教も神道もそれぞれの形で残り、武士の内部でその思想がまた独自の発展を遂げたんだね。朝鮮と比較すると、日本の良さはこの多様性にあることがよくわかるね。」

万次郎「多様性とそれを成り立たせる和解のシステムだろうな。」

ジョン「一方の朝鮮は、画一性とそこに至らしめた排他性が特徴だね。それは一体どこから来たんだろう?」

万次郎「その画一化をもたらした歴史的主体は両班たちだろうね。」

ジョン「う〜む。しからば両班とは何ぞや? 」

万次郎「そう、それを解くことが、現在の韓国社会を理解する為の鍵だろうね。」


ジョン&万次郎6【差別と朝鮮文化5】

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万次郎「今から李氏朝鮮の歴史と儒教というものについて考えてみることにするかな。」

ジョン「ところで日本も儒教の国じゃなかったの?」

万次郎「そうだね。日本の場合は最初は仏教の坊さんたちが研究してたけど、江戸時代に入って封建制の秩序維持のために家康に採用されて、主に武士の間にひろまった。でも民衆の間には朝鮮ほどは拡がらなかったね。」

ジョン「李氏朝鮮の場合は儒教が国教だったんでしょ?」

万次郎「その通り。でもね、李氏朝鮮における儒教の意味の重みは日本とは比較にならないほどなんだ。それは単に『李氏朝鮮においては儒教は国教だった』という言葉だけでは汲み取れないものでね、高麗にも科挙の制度があったし、仏教では国内統治の道具にはならないので儒教も必要とされた。でも李朝儒教はもっと本格的なものでね。それを知るには李氏朝鮮の成り立ちということから考えないといけない。ところでジョンは李氏朝鮮がいつごろ誕生したか知ってる?」

ジョン「え!?  えっと、確か元寇の時に元と一緒になって日本に攻めてきたのは高麗だったよねえ。まだ李朝にはなってなかった。元寇が13世紀末だから、14世紀か15世紀頃かな?」

万次郎「元寇だなんて、よく知ってるね。」

ジョン「こないだ九州に旅行に行ったからね。」

万次郎「なるほど。その元が中原から退いて明が建国されるのが、文永の役から約百年後の1368年でね、この交代劇の影響を受けて、朝鮮半島において高麗が滅び、李氏朝鮮が起きるんだけど、それはその24年後の1392年のことだ。」

ジョン「ふうん、24年というと干支で言えばふた周りだね。元が滅んで明が起きたから、朝鮮半島の王朝が変わったわけだね。」

万次郎「そうなんだ。今元寇の話が出たから、李朝について語る前に、せっかくだから、それについてちょっとコメントするね。高麗軍は元軍と一緒になって日本に攻めてきたから、高麗を悪し様に言う人もいるけど、元のことでは日本人は高麗に感謝する必要もある。」

ジョン「なんで?」

万次郎「元寇というものは、第二次世界大戦以前は、日本にとって、唯一の外国勢力の日本本土への侵略だったから、日本人は悲惨な出来事としてよく覚えている。でもね、高麗が元に対して抵抗して頑張らなかったら、もっともっと悲惨なことになっていたかもしれないんだね。」

ジョン「高麗は元に対して簡単に白旗を上げたわけじゃなかったんだ。」

万次郎「それどころか何十年も頑張ったんだよ。」

ジョン「陸続きで元軍に対して、よくそんなに粘れたもんだねえ。」

万次郎「モンゴル軍が高麗に最初に侵攻したのは、1231年で、この時は首都開城が陥落して高麗は降伏、大量の奴隷と貢物を要求されたんだね。それで以後は江華島という陸からほど近い島に朝廷を移して、そこに20年以上立て籠もって対抗するんだ。」

ジョン「それを攻め落とせなかったのは、やっぱりモンゴル軍は海戦は苦手だったからかな。」

万次郎「草原・平地での戦いは得意としたが、海や山は苦手だったみたいだね。半島では一部の人々は山城を築いて逃げ込んだらしいよ。李朝朝廷が江華島で抵抗している間、モンゴル軍は、大きく分けると四回の遠征を行って、略奪し、殺し、捕虜をとり、あるいは補給を断つ為に農地を焼き払うということもやった。そして最後にはついに国王も降伏して江華島を出ることになるんだね。その後に起きたモンゴル軍の遠征では破壊と略奪は六年間に及び、これにより高麗王朝は全面降伏、多くの地がモンゴルの直轄領となった。この時点で元の目は、ようやく東の海の向こうの日本に向けることが出来るようになるんだね。」

ジョン「朝鮮半島を通れば近いもんね。」

万次郎「そして、日本を攻略するには高麗の船団がなければ不可能だからね。」

ジョン「じゃあ、高麗王朝を倒した元軍はすぐに日本にやって来たの?」

万次郎「いや、元にはまだ問題があったんだ。このようにして高麗王朝は全面降伏したんだけど、その後になっても三別抄と呼ばれる武人たちはなおも抵抗を続けていたんだね。」

ジョン「がんばれ、三別抄! 」

万次郎「えらく感情移入してるね、どうしたの?」

ジョン「なんか急に、そういう気分になった。我々アングロサクソンには尚武の血が流れてるからかも…」

万次郎「彼らはその時、日本に援軍を要請したんだけど日本側ではこれに答えなかった。1273年に済州島にて三別抄が壊滅することによって、40年間続いた高麗の抵抗はここにすべて終焉した。そしてその翌年に元と高麗の混成軍が日本に攻めてくることになる、こういう歴史的流れなんだ。」

ジョン「いやあ、朝鮮にも勇敢な武人がいたんだねえ。」

万次郎「実はね、この時の高麗は武人政権だったんだ。」

ジョン「そうなの? 韓国は文人を尊び、武人を卑しむ国だと思っていたよ。」

万次郎「それはそうなんだけど、それに腹を据えかねた武人がクーデターを起こしたんだね。で、軍の合議機関が実権を握るようになって、ちょっと日本の鎌倉幕府にも似た存在だった。」

ジョン「だからそれだけ戦えたんだね。」

万次郎「ほんとうは武臣の長であった崔氏はあくまで江華島に立て籠もって、抵抗を続けるつもりだった。でも文臣グループと国王が、停戦・講和にもっていくために、武人を抱き込んで崔氏を暗殺しちゃったんだな。」

ジョン「なんて奴らだ!」

万次郎「でも講和をして良かったのかもしれないよ。高麗王朝は金や南宋と違って滅ぼされなかったしね。でもそれは30年粘りを見せた武人政権のおかげだとは思うけどね。武人政権は滅んだけどね。」

ジョン「韓国にも誇れる歴史があって良かったね。」

万次郎「それがそうでもないみたいでね。韓国の歴史家にとっては、武臣政権の時代は儒教が衰えた暗黒期と見る傾向が強いみたいなんだ。」

ジョン「両班歴史学者め!」

万次郎「この時に韓国で武人政権が衰えなければ、今の韓国人はずいぶん違ったかもしれないね。ともあれ、元が日本に来るまでにこういうプロセスがあったわけだ。」

ジョン「なるほど。もし高麗がそこまで抵抗しなかったら、もっと早く元は日本にやってきたわけだ。」

万次郎「二度の元寇が終わった後でも、フビライは三度目の遠征をずっと目論んでその為の準備をしていたから、日本としては、その後も元が滅ぶまで安心できなかったわけだね。幸い色んな原因が重なって、そうはならなかったけどね。でも元寇の余波で国内はガタガタになって朝廷が二つに分かれることにもなった。」

ジョン「高麗は日本の為に戦ったわけじゃないけど、日本にとってはありがたい事だったわけだね。」

万次郎「ちなみに朝鮮戦争の場合は、米軍を中心とする国連軍は日本を共産主義から守る為に戦ったんだと言われているね。」

ジョン「それはその通りだけど、そのことで日本が感謝することはないと僕は思うよ。本来満州に防共の砦を築いていた日本を、そこから取り除いて、ソ連軍を参戦させたのはアメリカだからね。」

万次郎「中国で共産党が勝ち進むのも、ただ黙って見ていたしね。ただこういった歴史は、日本がロシアの侵略を防ぐ為に朝鮮を併合したことも含めて、この半島の地政学的状況を物語ってはいるよね。朝鮮は正史の中に記載されているだけで900回以上も外国の侵略を受けたそうだ。ちょっとこの歴史の悲惨さは我々には想像し難い。」

ジョン「アメリカ本土もほとんど他国の侵略を受けたことはないよな。独立戦争でイギリス軍と戦ったけど地上戦はそれだけじゃないかな。第二次世界大戦では、日本軍とドイツ軍が、それぞれ西と東の海岸に来た。独立間もない頃にフランスと揉めたりしたことはちょっとあったけどね。そんなもんかな。」

万次郎「その点では韓国は我々とは違って、歴史的に外国に対する強い警戒感をもっているみたいだね。とにかく高麗王朝は元に完全降伏した後、べったりと服属することになり、高麗貴族の間ではモンゴル文化が流行したりするようになる。」

ジョン「あらら」

万次郎「まあ日本の場合も、アメリカに負けてからはアメリカべったりだけどね。」

ジョン「そういえば日本には反米感情が少ないよね。ヨーロッパなんかだとアメリカを馬鹿にしたり嫌ったりする感情が、もっと普通にあるんだけど。」

万次郎「日本の反米感情の低さはガーナやケニア並みの世界最低ランクだ。ほら、この表を見てご覧よ。」

ジョン「本当だ。アメリカ人としてはありがたい話だけど、それは何でなんだろうね。」

万次郎「リベラルの中には思想的な反米感情もあるだろうけど、日本のメディアのリベラル色に相反して、日本人全般は保守的傾向が強いからね。日本の保守が総じて親米的なのは、ソ連や中国などの共産圏と海を挟んで対峙してきたという地政学的な要因のせいだろうね。」

ジョン「単純にアメリカ人やアメリカ文化が好きだから、というわけではないんだね。」

万次郎「勿論そういう面もある。そういう意味ではアメリカ人とアメリカ文化は世界中から好かれているよ。そして多くの日本人も、何故反米意識が低いのかと尋ねられたらそう答えると思う。だけどね、それだけなら、反米意識の低さに反比例して親米意識が大きくなければいけないだろう? だけど、ほら、見てご覧。統計的にはそうなっていないんだね。」

ジョン「本当だね。でもそれは、日本が安全保障でアメリカに期待してるからなのかなあ。」

万次郎「たとえばね、オバマさんが慰安婦問題や靖国問題で日本を批判したと受け取られた時に、多くの保守の日本人の言動の中に、珍しく明らかな反米感情が芽生えたんだね。何故ならオバマさんは知ってか知らずか、中国や韓国の覇権戦略に加担したからだ。それを考えると日本人の反米意識の低さは、日本人の安全保障の観点とリンクしていると考えても良いと思うね。」

ジョン「じゃあ、今後の政治的状況によっては、日本人の中にまた戦争中のように反米感情が盛り上がる可能性だってあるってこと?」

万次郎「今までは日本の安全保障政策とアメリカのそれとが一致していることが多かった。でもかりにアメリカが中国と協調政策をとり始めたりしたら、有り得るだろうね。この点については、多分日本人よりもアメリカの政策担当者の方が良く理解してんじゃないかと思うことがあるけどね。話を戻すと朝鮮の場合でも、高麗末期になると、国際環境の変化に応じて朝廷内部の国論は二分されるようになる。その時には新しく明が起こり、元は北方に退けられて力を失いつつあったんだね。そのような状況下、高麗の朝廷は親元派と親明派に分かれることになる。そして国教的な地位にあった仏教のかわりに新しい思想潮流である朱子学を学んだ新進官僚たちは、この親明派の側だったわけだ。」

ジョン「親明派に追い風が吹いてるような感じだね。」

万次郎「朱子学官僚たちは朱子学的理念に基づいて国家を運営しようとする点において共通していたが、その方法論を巡って二つに分かれていた。一つは高麗王朝の体制内において改革をしようとするグループ。もう一つは朱子学的理念に基づいた新王朝を建てようとしたグループだ。」

ジョン「社会主義における漸進主義と急進主義みたいだね。」

万次郎「まさしくその通り。そして急進主義のグループは、高麗王朝の天命は尽きたと主張して、クーデターを起こす根拠としたんだ。」

ジョン「天命って説明してもらえる?」

万次郎「天命思想とは支那に古くからある政治思想で、国家支配の正当性は、君主が天帝より使命を与えられていることにある、とするものだ。君主はまた天帝の子ともされ、だから天子とも呼ばれる。そしてまたこの正当性は君主自身の徳をも基盤とし、君主が徳を失うと、その時点で天命は尽きることになる。そこで天帝は新たな有徳者を見つけて、天命を革(あらた)める。これを革命というんだね。」

ジョン「その点はヨーロッパの王権神授説より柔軟な発想だね。」

万次郎「そしてこの急進主義的・革命的朱子学がもととなり、軍人李成桂がクーデターを起こして李氏朝鮮王朝を打ち立てることになる。そして今度は彼らが、新王朝が天命を受く正当性について人々を納得させる必要が生じることになったわけだ。このような国家の成り立ち・素姓が、500年の歴史を通して社会の中に朱子学思想を浸透・貫徹させていく努力を続けていくという、その後の国家としての型を規定したんだね。」

ジョン「なるほどねえ、よくわかった。確かに単なる『国教』という言葉ではその重みは言い表せないね。そして儒教が持っている思想的価値とは別に、儒教を国体に組み込まねばならぬ政治的な事情があったわけだね。」

万次郎「そう。それが僕が言いたかったことだ。そして現在の北朝鮮政府も、社会全体の理念的組織化という点においては、歴史的精神的な親である李氏朝鮮に忠実であるとも言えるわけなんだね。」

ジョン「北朝鮮李氏朝鮮の孝行息子?」

万次郎「孝行息子よりは極道息子だけど、親にどうしようもなく似てしまったパターンかな。さて、今までの話は李氏朝鮮の国内的な正当性の話だ。もう一度国外に目を転ずると、中原では、天命が革まり明が興っている。李氏朝鮮は明と親子のような関係を結ぶんだが、そのことで、李氏朝鮮の正当性は、明の正当性によっても支えられていることになる。つまり明が天帝から受けている天命が、明国王を通して李朝の王にも分け与えられているという関係だ。このことからも李氏朝鮮は明の忠実で熱心な模倣者としての行動を取っていくことになるんだね。」

ジョン「朝鮮の外交政策は、大に事(つか)える事大主義って言うけど、明との関係においては事大主義っていう言葉だけじゃカバー出来ない緊密な政治思想的繋がりがあったんだね。」

万次郎「そう。このように李氏朝鮮にとっての儒教朱子学は、その国体のもっとも本質的な部分を構成するものであり、そしてそこには流動的な国際関係に従属する部分もあった。だから彼らの儒教について考える時はその点をも考慮しなければならないんだね。一方日本では、お坊さんや武士や町人で興味をもった人が純粋に学問的見地から儒教を研究したりなんかしていた。だから場合によっては両者の姿勢はまったく交わらないこともあった。日本の儒学者は朝鮮の儒教を煩瑣で哲学的ダイナミズムにかける形式的なものと見たんだね。ところがその形式性の中にこそ彼らの政治的ダイナミズムがあったということも出来るかな。」

ジョン「日本の場合は儒教オタクだったんだね。」

万次郎「それはちょっと、違うかも。」

ジョン&万次郎5【差別と朝鮮文化4】

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万次郎「ブラウニーをツマミにバーボンを飲むのも結構いいもんだね。」

ジョン「ところで韓国人の『恨』ていうのは一体なんなの?」

万次郎「歴史について語る前にそれは押さえておいた方がいいかもね。僕が理解しているところでは、そんな難しいもんじゃないと思うよ。たとえば呉善花さんは次のように説明してる。

「韓国の女は、自分より美人の存在があることによって、「恨」を抱え、「恨」を抱えることによって、「恨をほぐす」ことへ向かうパワーがより強力に発揮される。自分をより美人にして行く努力の過程は「恨」をほぐしていく過程であり、しだいに「恨」がほぐれていく実感が生き甲斐ともなる。恨をバネにして生きる力が発揮されるのだけれども、逆にいうと「恨」がなければ生きる力が出てこない。恨をもちっぱなしで生きることにもなりがちである。」
(『韓流幻想』呉善花 p193)

韓国の「恨」とは日本語で言うところの「恨み」じゃないんだね。そういう使われ方もあるみたいだけど、一般には「恨み」を持つ以前の、より初源的な心理的反応で、心の中に不安や危機感というストレスが生じている段階だ。

韓国人じゃなくとも、上の例のように、自分の彼氏あるいは彼女が、自分以外の見目麗しい人間に惹かれているんじゃないかという不安や危機感を持つことは普通にあるだろう。

だから実は『恨』が生じる段階までは、日本人も韓国人も同じだといっても良いかもしれない。日本人と韓国人の文化的な差異は、この「恨」の取り扱い方の違いから生じる。上記の女性は『恨』を、ステップアップの契機として肯定的に捉えようとしている。これは日本ではあまり見られないことだ。仏教的観点からしても『恨』は苦の一つだと捉えられる。不安や嫉妬といった心の苦しみは人間の心理的現象であり心の病であるから、これを取り除くことを仏教では奨励する。この考え方は極めて内面的であり内省的だ。」

ジョン「キリスト教もその点では内省的だね。」

万次郎「そして仏教では『苦』を堅固な実態とは考えない。『苦』にはそれが生じる縁があるので縁を断つことによって『苦』は消えるわけだ。またそのことによって新たな苦も生じなくなる。一方韓国人にとっての『恨』はより実体的な存在だ。内省的傾向の薄い韓国人の場合、「恨』は外部環境からもたらされるものであり、外部環境を変えることで解くことが出来ると考えられる。さっきの女の子の場合なら、ダイエットしてスタイルを良くするとか、整形するとか、相手の女の子に圧力をかけて手を引かせたり、彼氏の前で貶めるということに努力を傾注することになる。

日本と韓国の間に大きな社会的環境の違いがあるとすれば、それは個々の文化において何が『人生の目的』と考えられているかということだ。韓国人の人生の目的を特徴付けるのは、ソーシャル・クライミング、社会的上昇への強い情熱だ。これが都市や地方といった水平的拡がり、あるいは社会階層という垂直的拡がりにかかわらず、韓国社会を万遍なく覆っている。社会的上昇とは何も会社などのおける実際のポジションに関してだけでなく、容姿でもその他のことにおいても、とにかく他人の上に立つことだ。そして整形で皆同じ顔になるように、彼らの価値基準は画一的で多様性を欠いている。その価値観を共有しながら互いに争い合っている。これが韓国の社会的環境だ。」

ジョン「鶏のペッキング・オーダーみたいだね。」

万次郎「ああ、鶏のツツキの順序ね。何十羽いてもすべての個体に明確にランキングが割り当てられているっていう奴だろう? 人間の中では韓国文化が一番それに近いかもしれないね。そういう社会的環境にあるわけだが、現実の生活においては、自分が求めるポジションと実際のポジションには常に開きがある。特に『ソルレバル』と呼ばれる韓国人特有の楽観的傾向は、期待に対する裏切りを絶えず生みやすい。だから韓国文化は『恨』の温床となる。そしてそういった『恨』がすべて解けるわけもなく、韓国社会にはストレスが渦巻く。そして内省的傾向の薄さは、そのストレスを他人に対して向けることになり、韓国人は自らの国民性を評して『湯沸かし器』性格と呼び、あるいは『火病』という名前で米精神医学会の『DSM-IV』の文化依存症候群の一つにあげられることまでにもなるわけだ。」

ジョン「でも今みたいに順を追って考えてみると、その原因は決して複雑なものではないみたいだね。」

万次郎「韓国文化における『内省的性格の希薄さ』および『道徳の外面性』といった性質は韓国文化を他の文化から際立たせる。というのも、アジアであろうがアフリカであろうが、一般に小さい子供は嫉妬やそれから生じる攻撃を見せるが、ほとんどの文化において、教育や社会化の過程の中で内省や他者との和解について教え込むからだ。」

ジョン「…でも韓国人はそうでない。それが韓国人が小さい子供のように見える理由だね。不思議なのは儒教がどうしてそういった機能を果たしていないのかということ。」

万次郎「ないわけじゃないけど、戦国時代の動乱期に生まれた儒教は、秩序の回復に主眼が置かれていた。『孝』や『忠』はその為のルールだ。また韓国儒教の中心的なモティーフは祖先に対する『孝』だけど、現世における社会的外面的成功こそが、祖先の恩に報い、祖先を喜ばせることだという風に考えられているんだね。」

ジョン「わかった! その異常な祖先崇拝が、韓国に激しい社会的上昇欲を産んでいるんだ!」

万次郎「そういう面は確かにあると思う。でもね、お金や時間をかけた祖先崇拝の祭祀には自らの宗族の権勢を周囲に対して誇示する意味もあって、ジョンが言ったこととは反対に、社会的上昇欲が祖先祭祀を生んでいるということもあるんだよ。」

ジョン「逆の因果関係だね。」

万次郎「そして興味深いことは韓国人と我々の間には理解の一方向性が見られることだ。我々から見ると、韓国人における『内省的性向』の希薄さや、『血縁を超える集団意識』の希薄さはクリアなガラス越しに見るようにわかる。しかし彼らの側からは、『内省的性向』や『血縁を超える集団意識』を持っている、ということがどんな状態かはわからないんだ。このガラスはマジックミラーで出来てるんだね。畢竟、彼らが我々を評して何か言う時は、実は鏡に映った自分たちの姿を見ている、ということになるんだね。」

ジョン「マジックミラーの館に閉じ込められて、鏡に映った自分の姿に向かって怒鳴りつけている韓国人…」

ジョン&万次郎4【差別と朝鮮文化3 】

ジョン&万次郎4【差別と朝鮮文化3 】


ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】

ジョン&万次郎2【差別と朝鮮文化1】

ジョン&万次郎3【差別と朝鮮文化2】


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ジョン「僕はね、こうやって絨毯とか畳とかに座るのが大好きなんだ。」

万次郎「僕も。靴を脱いで入る絨毯敷きの飛行機があれば良いと思うくらいだよ。さてと、どこまで話したっけ?」

ジョン「朝鮮は中国的システムを取り入れることで、上からのジャーヒリーヤ化が行われた、ていうとこ。」

万次郎「ああ、そうだ。つまり、今でも韓国国内には激しい競争、政争、内部対立が見られるが、その歴史的起源は朝鮮が支那式の政治システムを積極的に取り入れたことにある、ということだね。」

ジョン「日本は支那の政治システムの影響は受けなかったの?」

万次郎「日本が一番影響を受けたのは、7世紀に唐の律令制に基づく中央集権制度を取り入れようとしたことかな。日本だけでなく朝鮮半島チベットもこの律令制を取り入れているから、その時代の日本と朝鮮の差異はそれほど大きくなかったかもしれない。ただここで僕が話題にしたいのは14世紀末から20世紀初頭まで500年以上に渡る長期政権を維持した李氏朝鮮についてだ。この時代に朝鮮半島支那化は極度に進んだ。一方日本では、そのような天子(=天皇)を中心とする支那式中央集権に対抗する勢力として武士が台頭し、17世紀には武士が完全に実権を握るようになる。また後で話すと思うけど、このように日本と朝鮮はまったく違う道を歩むことになったんだね。」

ジョン「オー! ブシドー、ニッポンダンジ、スゴイデスネエ。」

万次郎「急二外人ブラナイデ、クダサーイ。とにかくその時代の支那の明と、そしてその明の忠実にして熱心な模倣者であった李氏朝鮮という二つの国は政治体制は酷似していたけど、環境条件が違った為に、その運用結果にははっきりとした差異が認められることになった。そしてそういった歴史の過程は、現在においても中国人と韓国人の国民性の同質性と異質性の一つの原因ともなっている。中国と韓国は1992年に中韓の国交が正常化したんだけど、その結果、直接の人的交流を通して、中国人も韓国人の異質性に気づくようになった。」

ジョン「やっぱり中国人から見ても変?」

万次郎「ちょっと長いけど、良い例があるから紹介しよう。ある中国人が韓国に観光旅行に行ってね、それでその体験をネット上に綴ったんだが、以前日本語のニュースサイトがそれを紹介してた。確か僕のiPadに保存してた筈だけど…(と、iPadを取り出して文章を探す)……あった、これだ。その中国人はね、それまでは、韓国人が嘘をつくのが好きだと紹介するニュースなんかを見て、誇張の部分が多いのだろうと思っていたみたいだね…(iPadを渡して)まあ、読んで見てよ。」

-------------------- 以下、iPadに保存された文章 --------------------
今回はツアーで済州島とソウルに行った。ガイドは35歳の韓国人お姉さんだったが、車に乗るやいなや「中国の皆さん、韓国はどうですか。肺を洗う感じがしますか。PM2.5をはじめ、中国の環境はひどいそうですね。われわれ韓国人は環境をとても大事にしています」と抜かした。不快ではあったものの、まあ確かに済州島の空気は良かった。

昼食の時間になると、このガイドのお姉さんがまた「今日の昼ご飯は超おいしい韓国ならではの石焼ビビンバと牛肉鍋です。中国グルメよりおいしいし、ヘルシーですよ。中国では食べられません」などと言う。ふざけるな、出てきたのは普通の石焼ビビンバと白菜スープで、スープの上に牛肉が数枚ひらひらしているだけじゃないか。

食事中、鍋があったためにレストランの温度がとても高くなっていて、われわれ中国人観光客は汗びっしょり。そこで韓国人オーナーにエアコンをつけるよう求めた。するとオーナーは「済州では環境を大事にしているので、どうしようもない状況以外はつけない」と返答。われわれも強くは要求せず、早く食べ終わって車に戻り、エアコンに当たろうと考えた。しかし、車に戻るとさらにひどい状況が待っていた。エアコンが止まっているのだ。お年寄りもいて、熱中症になったら大変だからエアコンをつけてくれ、とお願いしたところ、ガイドのお姉さんからは「エアコン? ダメダメ。41人全員揃ったらつけますよ。エアコンだってガソリンを食うんです」と返された。

道中、ガイドのお姉さんはわれわれに韓国の「悠久」の歴史を紹介した。済州島は2万5000年あまり前に火山の爆発で形成され、1万年前にはすでに人類が活動していた形跡があるという。つまり、大韓民国は1万年の歴史があるということか。

午後は、みんなで茶葉を買いに行くことになっていた。お姉さん曰く、中国の茶葉はおいしいけれど、済州島のものにはかなわないとのこと。済州島のお茶は汚染されていないからだそうだ。そしてお姉さんは「ノルマがある、お願いだからみなさん、メンツを守るために茶葉を買ってほしい」と言うのだ。

茶葉の農園に到着すると、お姉さんはぺらぺらと一通りの紹介を始めた。われわれ中国人は自国の茶葉に慣れていて、済州島の緑茶に興味を持たず、結局誰も買わずじまい。車に乗るとお姉さんはすぐさま表情を変え、「誰1人として買わなかったんですか?中国人は本当に恥知らずだ」という衝撃の一言を放ち、われわれ全員を唖然とさせた。すぐに何人かの客が「われわれのどこが恥知らずだ。盗んだり奪ったりしたとでもいうのか。韓国の茶葉は不味い、だから買わない。このどこが恥知らずだ」と反撃、しばし緊張が走った。お姉さんは自分の非を悟っていたのか、すぐに「冗談ですよ」と言った。

その後、お姉さんは道中でまたやらかした。韓国の物価は高くて、ミネラルウォーターが1本6元(約113円)もするのは心が痛むでしょう、でも韓国人はみんな安いと思っているんですよ、と言う。そして「なぜなら、中国では皿洗いのおばさんの月収は2000元(約3万7600円)だけど、韓国では8000元(約15万円)だからです。中国では水が2元(約38円)、韓国では6元。計算すると、中国よりも安いことになるんです。中国人はかわいそうですね、経済的に韓国よりはるかに遅れています」と言い放ったのだ。

最後に自然博物館を訪れたのだが、ここでは歴史と文化についてのホラ吹きが始まった。「韓国の歴史は非常に長く、考察可能な形跡があるものでも5000年の歴史を持ちます。そして、済州島では1万年前から人類が居住していたと言われています。中国でも5000年ですよね。われわれ韓国は小さいですが、中国の歴史に引けを取りません」と説明した。そして、韓国ドラマの話になると「韓国ドラマは世界でもっとも好かれているテレビドラマです」と言った。

しまいには整形の話に及んだ。「韓国人が整形をするのは、不細工だからではありません。韓国人は美しさが他人へのリスペクトになると考えているのです。われわれ韓国人はすでに美しいのですが、他人への尊重を示すために、どんなに美しい女性でも整形するのです」だって。
-------------------- 文章ここまで --------------------

出典: Focus-Asia 2014/11/8

ジョン「なんか、中国人の目にも韓国人が異質なものに見えることがよくわかるね。」

万次郎「ネット上にはこんな中国人の韓国旅行の話がたくさんあって日本語で読める。まあ、嘘をつくぐらいのことは中国でもしばしばだが、韓国人の場合、極端な自己中心的な思い込みと、そこから来る優越感があって、そういったものが、相手の面子を無視してまでも、つい言葉の端々にほとばしってしまうんだね。」

ジョン「太陽は韓国を中心にまわっているんだね。」

万次郎「中国のネットでは、韓国は『宇宙の中心』と呼ばれているよ。中国人の韓国観光の似たような体験談は、日本語ネット上でもたくさん読める。中国人はまがりなりにも共産主義の唱える平等の名分の時代をくぐり抜けてきたから、韓国人のこのあからさまな差別意識には驚くみたいだね。そういうことがあるから、常日頃互いに貶しあってる日中の愛国者でも、韓国を馬鹿にすることで、仲良くなれる雰囲気がネット上にはあるくらいだ。」

ジョン「韓国人は日中友好のキューピットなんだね。ところで、さっきの記事を読んで思ったんだけど、経済成長を遂げたから韓国はこんなに傲慢になったんじゃないの?」

万次郎「その通り。でも彼らの民族的優越感は、実は彼らが貧乏な頃から存在していたんだ。外には見せなかったけどね。それについてもう一つ話を紹介しよう。以前韓国で放映されたテレビドラマの内容で、君の国アメリカが舞台の話だ。」

ジョン「韓国のドラマなら、いま流行ってるよね。」

万次郎「うん、でもそれよりずっと前の話でね、80年代のことだと思う。ある日本人のライターがね、韓国人たちがテレビドラマを見ている姿を何かの誌面で報告してたんだ。こんな話…

アメリカに留学している韓国人の話でね、彼がとあるパーティーに出席して、そこでアメリカ人の男女の学生がキスしているところを目撃するんだ。すると彼は、その男女二人を人目につかないところに呼び出して、彼らの行為がいかに不道徳で礼儀に反するかを諄々と説くんだ。でね、ここからが面白いんだよ。

…するとその二人は雷に打たれたようにショックを受けて、自分たちがいかに愚かで礼儀知らずだったかを悟るんだ。そして涙を滔々と流しながら、自分たちに天啓を与えてくれたその韓国人に感謝の言葉を諄々と述べるんだ、そういう話なんだ。

…それでね、その記事を書いたレポーターが目にしたのは、ブラウン管の前でドラマを見守っていた韓国人たちが、割れんばかりの大歓声をあげて、彼の快挙を褒め称えている姿だったそうだ。」

ジョン「う〜ん、絶対あり得ない話だ。」

万次郎「そうだろう。」

ジョン「韓国人は我々アメリカ人を礼儀知らずの人間と考えてて、礼儀とは何であるかを教えてくれようとしていたんだね。」

万次郎「まあ、韓国人の中だけで、そうやって溜飲を下げていたんだろうね。」

ジョン「今は韓国人にとってキスなど当たり前だろうけど、ほんのちょっと前まで、こんなだったんだね。まあ、『キスが不道徳』というのはわからないでもない。アメリカでだって昔は今ほどには大っぴらにキスはしなかった。」

万次郎「そうなんだ、韓国人の差別には一応『理由』があるんだね。だけどさっきの愛国的ガイドのお姉さんの場合、中国と韓国を比較しながら、公害や労働環境を理由として取り上げて韓国の優越を示すんだけど、何か嘘っぽい。そこには商魂の逞しさも潜んでいるんだけど、それと同時にある種の感情が明確に見える… 」

ジョン「相手を屈服させたいという感情だろうね。」

万次郎「そう。それがありありと見えるから、この中国人は彼女を嘘つきだと言ってるわけだね。」

ジョン「かなり気持ち悪いかも…」

万次郎「彼女が普段の生活の中でもいつもこんな愛国的だとは思わないけどね。」

ジョン「そうなの?」

万次郎「そうさ。それだけじゃ生活やってけないだろう? でもある種の状況、例えばこの場合のように、中国人の観光客を相手に韓国を説明するというような状況に置かれると、彼女の民族主義的感情にスイッチが入る。それはとどのつまり、韓国人という、同じ血を分けた一つの大きな血族の一員として自らを意識することに他ならない。」

ジョン「民族主義、全開だね。サッカーの時みたい。」

万次郎「そして同じ血族という認識は、彼らの社会生活がそうであるように、同じく血族グループとして認識される他の民族の頭を押さえつけ自らの血族を上に見せるという役割期待とセットになっている。彼らの社会認識においてはそのような序列の中でしか民族的アイデンティティーを担保できないからだ。」

ジョン「ガイドなんだから、『民族主義』モードはOFFにして、『おもてなし』モードとか『プロフェッショナル』モードに切り替えればいいのにと思いけど、そう簡単には変えられないんだろうね。」

万次郎「今の韓国人は我々と同じような服装や髪型をしてるから、ついなんとなく我々と同じだと思ってしまいやすいけど、民族が絡んだ時などに見せる彼らの反応は、我々とまったく違うもので、驚かされるんだね。」

ジョン「そう聞くと思い出すんだけど、我々が海外旅行する韓国人を見るようになったのは、90年代に入ってからだろう? 最初の頃はみんなジャージ着てバンコクを歩き回ってるようなもっさりした感じで、日本人とは違うことが僕の目にもわかったよ。」

万次郎「そうだったね。それが今や、K-Popだの韓流ドラマだの… あっというまに化けたね。」

ジョン「化けたね〜。」

万次郎「まあ、別にジャージでもいいし、オシャレであるのも悪くない。」

ジョン「イタリア人なんかはアメリカ人よりもずっとオシャレだし、そういうのは尊敬するけど。」

万次郎「ただ韓国人にとってのオシャレは、個性の表現というよりも何か別のものみたいだね。」

ジョン「『他人に対するリスペクト』じゃないことは確かだな。単に都会に出てきた田舎者が、一生懸命周りの真似をしてるのと同じように見えるけど…」

万次郎「それはね、その通りだとも言えるしそうでないとも言える。もし田舎者なのだとしたら、韓国は国中上から下までみんな田舎者ということになる。」

ジョン「それだよそれ、国家あげての田舎者。」

万次郎「否定をするつもりはないけど、そこで終わってしまったら思考する努力の放棄だ。それだと何故一方で韓国人は自らを至高の存在と考えているかを説明できないし、何故都市化産業化した韓国で文化の多様性が生まれてこないのかも説明できない。また彼らの顔面整形にかける情熱も理解できない。」

ジョン「じゃあ、韓国人の一番本質的なところは何だろうね。」

万次郎「今日話してるテーマに沿っていうと、『すべての国民を包み込む社会的上昇への情熱』と、その為の価値基準としての極端な『内面の軽視と外面の重視』だろうね。ここまで説明すれば、さっきのガイドのお姉さんの言動についてもわかってくるだろう?」

ジョン「ん?」

万次郎「お姉さんがPM2.5だとか、労働環境がどうとか言うのが、なんか胡散臭かったろう? 彼らがそういうことを平気で言うのは、韓国人にとって道徳は外面的なものだと考えられているからさ。」

ジョン「外面的な道徳!? 道徳は内面的なものだろう? それは矛盾してないかい?」

万次郎「そう思いたいけど、我々の場合だって、『神様が見ている』とか『世間様に顔向けできない』とか実生活の中での道徳を内面的か外面的か分けるのはそう簡単なことではない。ただ韓国人の場合は道徳と言うものは顕著に自分を飾ったり、他人と差をつける為の外面的なものなんだ。」

ジョン「なるほどねえ。そう言われれば納得できる気もするな。」

万次郎「そして、その起源を理解する為には、最初の話に戻るけど、中国と韓国の差異に目を向けなければならない。ついこの間まで、この二国は同じように儒教科挙の制度を基盤に据えた国家を何百年も続けてきたわけだからね。」

ジョン「やっと、そこに話が戻ってきたね。」

万次郎「アメリカの話が出たところで、バーボンでも飲みながら続きをやろうか。」

ジョン「うちにおいでよ。今朝ブラウニーを作ったから、ご馳走するよ。」

万次郎「え!?  …ビーフ・ジャーキーとかないの?」

ジョン「あれは南米インディアンの食べ物。僕のブラウニーは我が家伝統のアメリカのレシピだ。」



ジョン&万次郎3【差別と朝鮮文化2】

ジョン&万次郎3【差別と朝鮮文化2】


ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】

ジョン&万次郎2【差別と朝鮮文化1】



万次郎「(食事を終えて)ああ、喰った、喰った。さて何の話だったっけ?」

ジョン「韓国人がなぜ差別を肯定するか、それどころか、それが正しいことだとまで考えているのは何故か、という話から始まって、それを知るためには歴史的背景を知る必要があるって話になって、北朝鮮主体思想李氏朝鮮の500年の歴史と深い関わりがある、というようなところまで。」

万次郎「ああ、そうだった。じゃあまず歴史の話をする前に、朝鮮民族の民族社会学的特徴を抑えておこう。 朝鮮民族の社会を考える上でもっとも重要なアイディアは彼らが考える『血の原理』だ。」

ジョン『血の原理』?

万次郎「そう。『血の原理』、すなわち父系の血統に関する強烈な意識だ。」
   
ジョン「血統を誇る人たちならアメリカにもいるよ。アメリカのパワーエリートである東部のエスタブリッシュメントなんか特にそうだと思うけどね。」

万次郎「そうそれ。その血統。それでね、韓国人の場合は国民一人残らずその血統の世界に生きていると考えていい。一昔前までの韓国では、もし初対面の人が、たまたま同じ姓なら、お互いの本貫(姓の起源の地)を尋ね合った。そしてもし本貫も一緒なら、私は何派の二十何代目です、というような話になったもんだ。」

ジョン「それはすごいね。アメリカならお祖父さんの名前すら知らない人も結構いるよ。」

万次郎「そしてね、彼らは頻繁に親族が集まって祖先を祀る儀式を行っているんだ。旧暦元旦と中秋の年二回は四代前までのご先祖様の法事を行う。その時は、その直系親族が皆集まるのでソウルはガランとなる。この四代のご先祖様に関してはそれぞれの命日にも直系親族が集まる。またそれ以上古いご先祖様のための墓参りの日もある。」

ジョン「うわあ、いっぱいあって大変だね。日本も家族主義が強いというけど、どうなの?」

万次郎「日本にも法事はあるけど現在の日本は韓国ほどじゃない。ご先祖様を大切にするという点では韓国は大したものだよ。あと日本と韓国とでは家族制度に質的な違いがある。というのも、日本では大切なのは『イエ』なんだ。『イエ』を守ることなんだ。だからお嫁さんもイエの一員だから旦那さんと同じお墓に入る。だけど韓国ではお嫁さんは実家のお墓に入るし、姓も実家の姓を名乗る。だから日本を『イエの原理』とすると、韓国は『血の原理』なんだ。そしてこのような儀礼を通じた祖先とのコミュニケーションを通して、すべての韓国人は今でも、何百年という時代をまっすぐ貫ぬく一本の血の流れの上に、自らの存在を意識しているんだね。」

ジョン「漫画の『北斗神拳』みたいだね。」

万次郎「ところでジョン、2011年にアメリカで養子になった赤ん坊の出身国は韓国が一番多かった。韓国から沢山の赤ん坊が海外へ出て行く。何故だかわかるかい?」

ジョン「私生児に対する社会的偏見が強いから?」

万次郎「そう。そしてもう一つの理由は彼らが他人の子を養子にとる習慣がないからだ。そしたらそこで血の流れが途絶えちゃうからね。それはご先祖様に対する裏切りに等しい。畢竟、望まれずして生まれた赤ん坊が海外へ出て行くことになる。日本では他人の子でも養子に取ることがあるが、かつて併合時代に、そのことで朝鮮人の激しい怒りを買った。朝鮮人の目には犬畜生のような行状と写ったようで、当時を知る韓国人はこのことで今だに怒りを顕にする人もいるらしい。」

ジョン「本当に血にこだわるんだね。」

万次郎「韓国には『手の指は内側に曲がる』という諺がある。どういう意味だと思う?」

ジョン「一度掴んだものは放さない?」

万次郎「え? 韓国人にはそういう性格もあるかもしれないけれど、そういう意味じゃなくて、指は外側には曲がらない、五本の指のように親族は互いに助け合うもんだ、という意味だ。」

ジョン「なるほど。美しい家族愛だね。親族と言っても近い親族と遠い親族とあるけど、その辺はどうなんだろう?」

万次郎「血のつながりが濃いほど関係も濃くなるんだけど、親族の中でも一つの核と考えられるのは、さっき言ったように四世代前の祖先を単位とするグループだ。彼らは互いに助け合うチームのような存在と考えてもいいだろう。そして誰か一人が成功したら、他の人を当然助けなければならない。」

ジョン「あ、わかった。だからどの大統領も親戚に便宜をはかって、大統領を辞めた後で問題となるんだね。」

万次郎「その通り。韓国人からネポティズム(縁故主義)がなくならないのは、たとえ法には背いていても、それは民族的価値観としては正しいことだからなんだ。」

ジョン「もし便宜をはからなかったらどうなるんだろう?」

万次郎「その親戚は怒るだろうね。場合によっては刃傷沙汰とかとんでもないことになることだってあるだろうね。」

ジョン「なるほど… ややこしいね。一概に韓国の汚職を批判するわけにもいかないってことだな。」

万次郎「そして、この親族の世界の内側を「ウリ」と言い、その外側を「ナム」と言う。いわば身内と他人だ。そしてここがもっとも重要なところなんだが、韓国人にとって他人(ナム)とは、ある意味、敵と同義なんだ。」

ジョン「渡る世間は鬼ばかり、ということだな。」

万次郎「妙な言葉を知ってるね。韓国に旅行に行くとぼったくられるので有名だけど、韓国人は外国人だけでなく隙あらば韓国人からもぼったくるんだね。ここは一つ数字に語らせてみよう。2010年の韓国での詐欺の発生件数は10万人あたり417件、一方日本は29件だから、実質日本の14倍以上でこれは世界ランキングでもトップクラスだ。このように韓国人は互いに騙しあっているわけだね。」

ジョン「日本にいると人を信頼することが当たり前だけど、韓国に住んだら人を疑わないと駄目ということだな。」

万次郎「そう。だからね、日本の親は子供達に他人に迷惑をかけないことをまず教える。韓国の親は反対に子供達の心の中に強いエゴを育てる。それは韓国社会の中で生き残って行くために必要だからだ。この殺伐としたサバイバルの感覚がね、儒教よりも何よりも韓国人の根底にあるんだよ。だから生きて行くには相手を押しのけ貶めなければならない。このアイディアが韓国人の根底にあるんだ。」

ジョン「互いに信頼しあってる日本社会もある意味極端だけどね。でも他人を信頼できない社会は世界には他にもいっぱいあるんじゃないかな。」

万次郎「それはそうだ。でもアフリカとかはわからないけど、アジアの多くの地域では、殺伐とした世界があっても、その一方でイスラム教キリスト教、仏教というような、部族を越えた普遍的な協調と信頼のシステムがあって、世界を別の面から補完している。でも韓国はそれが極めて希薄なんだ。歴史的に仏教を排除したこともあってね。」

ジョン「儒教はそういう役割を果たさないの?」

万次郎「儒教の話はまた今度にしよう。今までの話をまとめてみると、まず朝鮮人にとって、血縁集団が互いに助け合う関係としてある。そして、その外側の他人とは、互いに相争い騙し合う関係だ。だから韓国という国は、極端な言い方をすると、血縁集団というチームが沢山あって、それぞれのチームが互いに競い合っているサバイバルゲームのような世界なんだ。このサバイバルゲームの世界では数が多い方が力となる。だから朝鮮人は互いに集まって住む傾向がある。併合時代の朝鮮の村はほとんど同族マウルだった。同族マウルとは一つか二つの特定の姓氏が親族組織を通して、村の運営に影響力を及ぼしているような状態だ。」

ジョン「つまり、この村は李さんばっかり、あの村は朴さんばっかりっていうこと?」

万次郎「そう。親族間のシステムがそのまま村を運営するシステムになるんだ。そして他の親族グループが村にいる場合は、自分たちで掘った井戸は彼らには使わせない、なんてこともあったようだ。」

ジョン「団結して外に向かって敵対するんだね。」

万次郎「そう。だから、いつも彼らは臨戦態勢にあると考えるとわかりやすいかもしれないね。一般に戦時には意見の統一が大切だからね。だから外に向かって対峙している時は、意見の多様さをまったく認めない。強制されるんじゃなくて自然とそうなるんだ。だから日本に関しての議論では反日でまとまり、それ以外の一切の言動を国内で認めない、ということにもなる。」

ジョン「……今までずっと話を聞いていて、僕はイスラム教徒の言う『ジャーヒリーヤ』ていう意味が初めて良くわかった気がする。」

万次郎「ムハンマド以前のアラビア世界のことだね。」

ジョン「そう。メッカやメジナのようなオアシス都市で、まともな統治機構が存在せず、部族同士が絶えず抗争を繰り広げていた時代。そこへムハンマドが登場して、初めて部族を越える普遍的価値観を提供し、人々の間に平穏が訪れたんだ。」

万次郎「イスラム教の誕生には、単に宗教的なものだけじゃなく政治的な背景もあったんだね。」

ジョン「ジャーヒリーヤというと『無明時代』っていうニュアンスがあると思う。だからイスラム教徒に対して韓国人を説明する時には、『韓国人たちは未だにジャーヒリーヤの世界に生きているんだ』って説明すればわかりやすいかもね。」

万次郎「それはどうだろうね。李氏朝鮮にしても韓国にしても、その時代のオアシス都市にはなかった、統治者や官僚など国家としての枠組みがあるからね。」

ジョン「国家としての枠組みがあっても、アフリカや中東では国政内部が部族間の非情な争いとなっている例は多々ある。そういうのを指してジャーヒリーヤと呼んでみたいんだ。」

万次郎「なら、いいかもね。「ジャーヒリーヤの時代を生きる韓国」って本のタイトルっぽいね。でもね、ジョン。アラビア半島の場合は異部族が一箇所に共住する現象が交易上の必要から生じ、オアシス都市にジャーヒリーヤ状態が生まれた。しかし朝鮮半島の場合は、一つの国の中に中国的システムを積極的に導入することによって、上からのジャーヒリーヤ化が行われたと考えることも出来るんだよ。」

ジョン「『上からのジャーヒリーヤ化』? 言葉がどんどん一人歩きするね。何だい、それは?」

万次郎「それについては水パイプでもふかしながら語ることにするか。」

ジョン「そんなの日本にあるの?」

万次郎「絨毯屋で出してくれるんだ。」

ジョン「それはくつろげて良さそうだね。」

ジョン&万次郎2【差別と朝鮮文化1】

 ジョン&万次郎2【差別と朝鮮文化1】


 ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】


ジョン「やあ、万次郎。僕はアジアのことは全然知らないから、こないだの話、面白かったよ。あの時君が言った言葉で、『韓国人にとってはスポーツも汚い政治の世界と一緒なんだろうね。不思議なことは彼らにとってはこれが「正しい」ということなんだ。』ていうのがあったよね。

万次郎「ああ、そう言ったよ。」

ジョン「そこんとこが、どうもよくわからなくて、あれからその事について日本人の友だち数人に聞いてみたんだ。」

万次郎「何て言ってた?」

ジョン「ある人はね、それは『小中華思想』のせいだと言い、別の人はそれは『儒教』のせいだと言うんだ。」

万次郎「それはその通りだと思うよ。それでジョンはどう思った?」

ジョン「それらの説明はよくわかるんだけど、何て言うのかなあ、なんかもう一つしっくり来ないんだよね。」

万次郎「なるほど… あのね、韓国人の行動や言動を理解するのはそう難しいことじゃないと僕は思ってる… あのね、韓国人ていうのはさ、世界で一番道徳的な民族だって知ってた?」

ジョン「それは、彼らがそう考えてるっていうことだろう?」

万次郎「そう。彼らの考えている道徳と我々が考えている道徳は次元の違うものだ。それには今ジョンが言った儒教の影響なんかがあるんだけれど、その本質を理解しようと思ったら、もっと朝鮮族の文化や意識の古層にあるものを考えないといけない。」

ジョン「うん。」

万次郎「以前ある韓国人がネット上で韓国人について解説しているのを読んだことがあるんだけどね、印象に残っているのは彼の次の直裁な言葉だ。」

ジョン「どんなの?」

万次郎「『韓国人は基本的にレイシストなんだ。そして、レイシストが何故悪いのかとむしろ尋ねる国でもある。』」

ジョン「それだよ、それ。韓国人は差別をまるで『正しいこと』と感じているように見える。何でなのかな?」

万次郎「日本人にとっても不思議だけど、君たちアメリカ人には特に理解しづらいだろうね。」

ジョン「実際には人種差別があったとしても、建前としてそれを認めることはあり得ないからね。差別を積極的に肯定するなんてことは…」

万次郎「ちなみに日本人は韓国人から『猿』と呼ばれてるんだ。草彅剛というアイドルが日本にいるんだけど、以前彼が韓国のテレビ番組に出演した時のことだ。韓国人のお笑いタレントが出てきて彼の前で猿顏をした時、韓国のスタジオは大爆笑に包まれた…」

ジョン「何が面白いのかね…」

万次郎「こんあこともあった。アジアカップの日韓戦で、韓国のキ・ソンヨンはPKを決めた直後にテレビカメラの前で猿のモノマネをしたんだ。それで日本人を馬鹿にしたつもりなんだね。」

ジョン「何か小さい子供みたい。」

万次郎「韓国のニュースサイトは誰でもコメントがつけられるようになってるんだけど、日本関連の記事につけられるコメントは『猿』という表現であふれている。たとえばこんな感じ。」

  「なぜ猿たちが死ぬニュースを国際ニュースで伝えるのか。」

  「動物雑誌に記事を上げてください。」

  「猿たちよ、独島にバナナはない。」

  「歴史を忘れてしまったサルにバナナはない。」

  「猿には棒とバナナの両方が必要だ。
  バナナで誘惑してから、棒で犬を殴るように殴らなくてはならない。」

ジョン「 なんか酷い話だね。むしろ欧米人のレイシストがかつて黄色人種を猿と呼ぶことはあったけどね。僕らアメリカ人から見れば日本人も韓国人も見た目は変わらないんだけどなあ…」

万次郎「彼らが日本人を『猿』と呼ぶのは見た目じゃないんだ。彼らは日本人を文化的に劣った民族だと見做してるから、ああやって馬鹿にしてるんだね。」

ジョン「そんなことで面白がる韓国人こそ、文明の対極にいる野蛮な存在に思えるけどなあ…」

万次郎「そのような下劣な言動を繰り返しつつも、彼らは自らをもっとも礼儀正しい民族だと考えている。不思議だよね。この謎を解く為には、儒教の教えの内容を検討するだけでは見えてこないものがある。それよりも儒教そのものが社会の中でどういう役割や機能を歴史的に果たしていたかを考えることが大切で、その為には、歴史や政治、民族性など多角的な見方が必要になってくるんだ。」

ジョン「ふむふむ。」

万次郎「僕は韓国や朝鮮文化の専門家じゃないけど、それらを吟味することで、彼らの行動や言動の原理がわかり、彼らが次にどのように考えてどのような行動をするかがある程度予測出来るようになるだろうと考えてる。」

ジョン「うんうん。」

万次郎「ところでジョン、韓国と同じ民族からなる北朝鮮という国があるだろう。僕はね、あの国は世界で最も恐ろしい国じゃないかと考えてるんだ。」

ジョン「確かに北朝鮮は恐ろしい国だと思うけど、世界で一番と言われるとどうかなあ。ユダヤ人やアルメニア人、ジプシーは恐ろしい目を受けたし、ルワンダユーゴスラビア民族浄化…」

万次郎「それらは他民族に対して行われたことだろう?」

ジョン「じゃあ、ソ連や中国、カンボジアなんかはどう? 同じ民族に対して大粛清が行われたけど…」

万次郎「それら共産圏は酷かったね。そういった中でも北朝鮮が特に酷いと僕が思う理由は、その極度に発達した管理体制だ。1965年に北朝鮮にある東ドイツ大使館は本国にこう書き送っている。

『国民が不満を公言すると職を失う可能性もある。どこへ行ったか家族に知らされることもなく、多くの人々が行方不明になっている。親族の連帯責任のようなものもある。拘留者の家族は、住宅を与えられず、食料の配給も受けられないことがある。』

当時の東ドイツだって、秘密警察があって収容所があって酷いとこだったんだけど、ドイツ人の目から見ても、北朝鮮連座制度などによる極度の管理体制は異様だったんだと思う。ところでかつてこの北朝鮮に感銘して、同じことをやろうとした共産圏のリーダーがいたんだけど誰だか知ってるかい?」

ジョン「ルーマニアチャウシェスクだろう?」

万次郎「よく知ってるね。」

ジョン「ルーマニアに旅行したことがあるんだ。チャウシェスクの豪邸を見に行ったら、ガイドの人が、『チャウシェスク北朝鮮と同じことをルーマニア人に対して行おうとした』って何度も憤慨して語ってたのが印象的だったんで覚えてた。」

万次郎「チャウシェスク北朝鮮を訪れた時、人々が見事に管理・支配されてるのを見て感銘を受け、同じことをやろうと、北朝鮮主体思想までルーマニアに持ち込もうとしたんだね。」

ジョン「主体思想ってどんなもの?」

万次郎「簡単に言うと、社会政治的生命体論に基づいて、社会を脳髄、神経、手足の三つに分ける。そして金日成を脳髄、朝鮮労働党を神経として、人民を手足とするんだ。そしてこの三者が有機的に一体となった国家論を提唱したわけだ。」

ジョン「じゃあ、人民には何の自由もないことになるじゃないか。そんな馬鹿なことがあるもんかい。誰だって、はいはい私は手足になります、なんて素直に従うとは思えないけど…」

万次郎「そうだろう。だからチャウシェスクは失敗したのさ。でもね、北朝鮮ではそれがうまく行ってるんだ。冷戦期のソ連では、人々は表面的には党に従いながらも、親しい人同士では本音で話し、ジョークを言ったりなんかしてたもんさ。だからといって北朝鮮も同じだと思ってはいけない。北朝鮮では多くの人が本気で主体思想を信じ、金ファミリーを崇拝しているんだ。」

ジョン「なんか宗教みたいだね。」

万次郎「そう。北朝鮮のことを世界最大のカルト宗教と呼ぶ人もいる。チャウシェスクが失敗したのは、その北朝鮮ルーマニアの大きな違いを考慮に入れていなかったからだろう。」

ジョン「何だい、それは。」

万次郎「李氏朝鮮の五百年にわたる人民の洗脳の歴史さ。」

ジョン「ちょっと壮大な話になってきたね。」

万次郎「ところで腹が減ってきたんだけど、君は?」

ジョン「そうだね。何か食べる?」

万次郎「朝鮮焼肉なんかいいなあ。近くに済州島出身の人がやってるとこがあって、そこのタレが凄くうまいんだよ。」

ジョン「いいね。」

万次郎「続きはそこで話そう。君の奢りだよ。」

ジョン「……あまり高いのは注文すんなよな。」




ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】

 ジョン&万次郎1【日本における反韓の起源】



ジョン「あのさあ、万次郎、ちょっと聞きたいんだけど…」

万次郎「うん、なんだい?」

ジョン「いま日本で韓国人に対するヘイトスピーチとか起きてるじゃん? 日本でナショナリズムが高まってるから、そのうち欧米人に対する反感も高まったりするのかなあ…」

万次郎「はあ? あのさあ、ジョンの読んでるニュースに何て書いてるかは知らないけど、日本人の一部が怒ってるのは、韓国と北朝鮮、あとは中国に対してだけだよ。」

ジョン「そうなの?」

万次郎「そうさ。ヤクザとか反日活動家とかと無関係な在日の人までをも対象としたヘイトスピーチは、日本人として恥ずべき行為だと思うけど、そこにはニューヨーク・タイムズなんかが決して書かない理由があるのさ。そもそも日本人がなんで怒ってるかわかる?」

ジョン「うーん、それは… 韓国人というマイノリティーに対する差別のせいかな?」

万次郎「まあ、そういうのがないとは言わない。だけど明らかに言えることは、今起きてる反韓運動は最近の韓国の態度に対する日本人のリアクションなんだ。だから君たち欧米人とは何の関係もないことなんだよ。」

ジョン「ふうん…」

万次郎「そして、そういうのが始まったきっかけも割合はっきりしてる。2002年にサッカーのワールドカップが日韓共催で行われたの覚えてる?」

ジョン「ごめん、スポーツはNBAとかMLBとかしか興味なくて…日本の野球はちょっと知ってるけど…」

万次郎「そうか。サッカーファンなら話は早いんだけどな。まあいいや。とにかく2002年に日韓の親善も兼ねて、ワールドカップをこの二国で開催したわけさ。でさ、サッカーの試合って、終わると選手同士がユニフォームを交換したりするわけ。でも韓国の選手はどこの国とも交換してもらえなかった。なんでだと思う?」

ジョン「……」

万次郎「みんな、韓国に怒ってたからさ。」

ジョン「……」

万次郎「韓国選手の悪質な反則、審判の買収、韓国人ファンのマナーの悪さ、運営のお粗末さ、なんかにね。FIFAって聞いたことある?」

ジョン「International Federation of Association Football (国際サッカー連盟)かな。」

万次郎「そう、そのFIFAが2004年に出したDVDの中に『W杯100年の10大誤審疑惑』ていうのがあったんだよ。2002年のワールドカップの際、韓国はイタリアとスペインを破って世界四強まで登り詰めたんだけど、10大誤審疑惑のうち4つまでが、この二試合からのものだったんだ」

ジョン「へえ…」

小次郎「具体的に言うと、スペイン戦では、モリエンテスの放った二本のゴールがどちらもノーゴールと判定された。結局延長が終わって0対0のままPK合戦で韓国はスペインを破ったんだが、FIFAはそのDVDの中でこの二つのノーゴールを疑わしいとしたんだね。

ジョン「じゃあ、スペインが勝っていた、ていうことだね。」

万次郎「そう。その前のイタリア戦では、1対1で迎えた延長戦の後半5分にトンマージが決めたゴールがノーゴールとなり、その後トッティが退場とされた後に、韓国がゴールを決めて勝つんだけど、このノーゴールと退場もやはりDVDの中で誤審として取り上げられた。実際この退場についてはFIFAが正式に誤審と認めている。」

ジョン「じゃあ、その試合もイタリアが勝っていた可能性が高かったというわけだね。それにしても酷いね、その審判は。どこの国の奴だい?」

万次郎「エクアドル人なんだけどね。エクアドル・リーグでも不公正な判定をして何度か出場停止になっている。FIFAはこの年のうちに説明なしに彼を国際審判から除名した。韓国イタリア戦で酷かったことは、タックルや肘打ちなど韓国選手の半ば常軌を逸したラフプレーに対して、カードはおろかファールを取ることもしなかったんだ。」

ジョン「悪質だね。」

万次郎「地面に転がるマルディーニ選手の頭を蹴ったイ・チョンスは後にラジオ番組で次のように語っている。

『もう一度やってしまおうとしたが、審判が見ているので我慢した。 マルディーニは、ぼーっとしていた。 確かに私は足元でマルディーニの頭を蹴った。しかしそれは選手生命に差し支えない、 ただ脅威を与える事が目的の高度の反則技術だった。』」


ジョン「何て言ったらいいのか! …もう、わからないよ!」


万次郎「また応援する韓国人たちのマナーも酷かったんだ。ドイツ戦では「ヒットラーの息子たちは去れ!」というプラカードを挙げたり、相手選手たちの写真を遺影の額に入れて応援した。」

ジョン「何なのだろう、その品格のなさは…」

万次郎「まあ、そういうのが彼らの感覚では普通なのさ。彼らの下品なやり方というのは、ワールドカップの前から一貫して始まっていて、例えば、海外の記者に対しては、酒と女性を供応して韓国にとって良い記事を書かせようとしている。サッカー・ジャーナリストのマーティン・ヘーゲレ氏はこう語っている。

「私はこういう汚い手段を徹底的に憎む。ジャーナリストの対する行為で、もっとも卑劣なものではないか。アルコールで酩酊させ、(女性提供の事実で)相手を脅迫する。」

ジョン「それってソ連や中国が得意としてたハニー・トラップだよね。でも政治の汚い世界じゃなくて、公平さが望まれるスポーツの世界のことなのに…」

万次郎「韓国人にとってはスポーツも汚い政治の世界と一緒なんだろうね。不思議なことは彼らにとってはこれが「正しい」ということなんだ。まあ、こういうのは山のようにあって、話し出せばきりがない。とにかくそれで世界のサッカー関係者から韓国への非難が相次いだ。次いで行われた2006年のドイツのワールドカップでは、キャンプはドイツ国外へ強いられ、どの国も親善試合を拒んだ。FIFAから韓国との親善試合を押し付けられたスウェーデンは抗議したくらいだ。」

ジョン「韓国人はちょっとは反省したかな?」

万次郎「いや、それはないね。非難されると彼らは反対に憤慨して相手を罵る。また韓国のメディアも韓国人が聞きたくないことはほとんど書かないから、閉じた情報世界の中で彼らの思いはどんどん増幅される。そういうわけで韓国国内では、世界の四強に入ったということで皆が有頂天になり酔いしれて、これを契機として世界に対してどんどん傲慢になって行ったんだ。」

ジョン「大学にも韓国人の学生が数人いるけど、彼らはそんな感じには見えないけれど…」

万次郎「日本の文化の研究に来てる子たちだろう? そういう子たちはそもそも日本の文化に興味を持っているし、開かれた目を持っているのかもしれないね。僕はよくニュースサイトにつけられた韓国人のコメントを自動翻訳で読んだりしてるけど、大多数の韓国に住んでいる韓国人がいかに閉ざされた情報空間の中で、閉ざされた思考を共有しているかがよくわかるよ。」

ジョン「ふうん、なんていうか、韓国人と日本人は随分違うんだね。」

万次郎「そうなんだよ。だけど日本人もワールドカップまでは、その違いをよくわかっていなかったんだ。正直な話、それまで日本人は韓国という国にそれほど関心を持っていなかったしね。しかしワールドカップの時には日韓親善を目的とした共催ということもあって、日本で競技場や大型スクリーンで試合を見ていた人達は皆がこぞって韓国を応援した。韓国でも当然同じことが起きていると人々は思ってたんだ。ところが韓国に観戦に行った日本人はまったく別のことをそこで目撃した。韓国では、日本の試合となると、熱狂的なまでに相手チームを応援し、日本の敗戦を祈っていたんだ。」

ジョン「日本人は韓国を良く知らなかったんだね。すぐ隣の国なのに。」

万次郎「そう、問題はまさしくそこなんだ。日本のサッカーファン達は自分たちが目にした色々な意味での韓国の異常さを、日本のマスメディアでまったく報道しないことに気がついたんだ。さっき言った異常な審判についてもテレビで目にしているのに解説者はほとんど言及しない。そこで日本のサッカーファン達は海外のニュースやサイトをソースとして、日本のマスメディアが報じないことをネットを使って情報を発信し始めた。そういう過程の中で、サッカーだけじゃなく、日本のマスメディアはとにかく韓国については悪く書かないという体質があることが誰の見にも明らかになって行ったんだ。我々が韓国について知らなかったのは、マスメディアによって目隠しされていたからだということに日本人は気がついたんだ。」

ジョン「ふうん、そういうことがあるんだね。」

万次郎「ジョンは知らないと思うけど、かつて9万人の日本にいたコリアンが北朝鮮に渡ったの知ってる?」

ジョン「北朝鮮って、あの北朝鮮かい? どうしてそんなこと…」

万次郎「当時の日本のマスメディアは北朝鮮を『地上の楽園』と言って褒めそやしたんだ。」

ジョン「スターリンの大粛清が明らかになる前のアメリカのリベラルののソ連に対する憧れみたいなもんか…」

万次郎「そう。我々も北朝鮮のことがよくわかってなかった。社会主義の大躍進で何不自由ない生活が出来ると考えて海を渡った人も多かった。」

ジョン「実際は地獄なのにね。」

万次郎「そう。だがやがて少しずつ事実が明らかになるんだ。」

ジョン「どうやってわかったの?」

万次郎「たとえば北朝鮮に渡る前に、もし酷いところだったら手紙は横書きで送るように示し合わせておくんだ。そうすると、『北朝鮮は素晴らしいところだ』という内容の手紙がすべて横書きで送られて来るんだ。」

ジョン「悲しいことだね。」

万次郎「そういうことがあってね、最初は北朝鮮を持ち上げて韓国を貶していた日本のメディアだったが、段々韓国を持ち上げるようになって行くんだ。韓国を持ち上げて日本を貶める。」

ジョン「何で日本を貶めるの?」

万次郎「それを説明すると長くなっちゃうけど、要は第二次世界大戦で負けた国、日本とかドイツとかイタリアでは、戦後になると、自分たちの国は100%間違っていた、ていう教育がなされるんだ。」

ジョン「『Loosers are always in the wrong』っていうわけだね。戦争には色んな要因があるからどちらが絶対正しいとか悪いとは一概に言えないと思うけど。」

万次郎「そう。でも『Might is right』。」

ジョン「アメリカは戦争に勝ったけど、アメリカのリベラルの中にはアメリカが悪い国だ、とアメリカを貶める人々もいるよ。」

万次郎「へえ、そうなんだ。自らの国を貶めるのは左翼の特徴かもしれないね。とにかく日本の左傾化したメディアは、それにはマスコミ労組の影響もあるんだけど、とにかく日本は悪かった、韓国には併合して申し訳なかった、ていう空気がある。一方の韓国は左右を問わず反日の国だから、そう言われると、勿論その通りだ、日本は韓国に悪いことをした、ということになり、日本の左翼言論と韓国の反日言論の間には共生関係が生まれたんだ。」

ジョン「韓国にとってはまったくありがたい話だね。」

万次郎「そう。そして日本には民団っていう在日コリアンの組織があってね。これは現在では韓国政府からお金を貰っていて、民団を運営している人々は、韓国の公務員のようなところもあるんだけど、この民団も韓国の国益に叶うようその影響力をメディアに勤める在日の人々に対して行使しているとも言われている。」

ジョン「それって外国人の違法政治活動じゃないの?」

万次郎「その辺りがどこで線引きされるか法律的なことはちょっとわからない。とにかく今までの話をまとめると、日韓ワールドカップを契機として、日本のインターネットの住人達は互いに情報を交換しながら、マスメディアが伝えないことを探す努力を始めたのさ。

万次郎「…だから、最初の話に戻すと、日本の報道を翻訳したニューヨーク・タイムズや他の英語のニュース・ソースだけを見ていたら、日本でナショナリズムが強くなっていて外国人を排斥する気運が盛り上がっているような気がするだろう? でも実際に起きていることは、それまで言論界を支配していたリベラルなメディアに対して、ある意味サイレント・マジョリティーだった人々がインターネットで情報を得て声を上げるようになってきたということなんだ。その一方で高齢者などインターネットリテラシーの低い人々はまだマスコミの情報操作の中にいる。彼らは今話して来たような韓国に関することは本を買って読まない限り、ほとんど知らないわけだ。」

万次郎「…そういったネットを通して情報を得ることを覚えた人々は、中国の勃興とそれに付随する韓国の奇妙な政治的動きに対して非常に警戒している。なぜなら日本のマスコミが日本の安全保障を考える為の情報を提供する役割をまったく果たしていないことに気がついているからだ。そういう意味では日本が保守化して来ている、というのは確かに本当だ。でもそれは急変するアジア周辺の国際政治状況のリアリズムに基づいた人々の反応だ。それに対して現実認識と危機意識の薄いリベラル・マスコミは、既得権益と外国勢力とも関係の濃い支持団体と自分達の立場を守らんが為に、そういった日本の民衆の動きを、日本人が外国人を排斥しているとか、戦争を望んでいる、とか事実にほど遠いことを捏造して攻撃しているんだ。彼らが日本国民を代弁しているわけではないんだよ。」

ジョン「ありがとう、万次郎。よくわかったよ。」

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日本に住んでいるけれども日本語の全然読めないアメリカ人の私の義兄が、数年前に日本の国家主義者に襲われるんじゃないかと言ったことを思い出しながらこの文章を書いた。


日韓共催ワールドカップについては以下のサイトなどを参照されたし。