タイ反政府デモとは何だったのか 3

マイケル・ヨン氏のオンラインマガジンの記事からの翻訳です

----------翻訳はじめ---------

タイ抗議集会の現況の分析(Anatomy of Current Thai Protests)
27 April 2014

この速報をその文脈において理解する為に、以前の速報を読まれたし:


タイの抗議者たちは暴力的か?(Are Thai Protestors Violent?)

ホイッスル吹き: 超党派組織(Whistleblowers: A Meta Organization)

始めよう:

[写真] 致命的な手榴弾攻撃を受けた後の人民改委(PDRC)メンバー。手榴弾は、人民改委のリーダーのステープ・トゥアクスパン氏の近くに落ちた。護衛はステープ氏に、車に飛び乗ってその場を去るように言ったが、氏は拒否して行進を続けた。

人民改委のより規模の小さいが、同じくホイッスルを吹いている同盟者がKPTである: KPTは、タイ改革の為の生徒と市民の同盟である。様々なグループが、英語、タイ語、あるいは頭文字を綴った名前をもっている。英字紙では、KPTはしばしばNSPRTと呼ばれる。

KPTは異なる指導者と遂行方法を持っているものの、人民改委と同盟を組んでいる。KPTはまた、目的を同じくする為、苦しむ農民たちとも同盟を組んでいる。KPTは、武力を辞さない唯一の改革派だ。

[写真] 人民改委への手榴弾による致命的攻撃後の光景に立つ爆発物処理班。赤シャツ隊はこのような攻撃の後しばしば自慢する

赤シャツ隊は毎日暴力で威嚇し、テロ行為を犯し、簡単に後が辿れるほどしばしば暴動を起こしている。もし赤シャツ隊がムスリムであったなら、米政府は彼らを、テロ行為を支援し自ら実行する組織としてレッテルを貼っていたことだろう。彼らは簡単に限界を踏み越える。KPTとは違って。

[写真] 2013年12月26日のディンデンでの凄惨な衝突のさなかに、KPTが警察を攻撃している

私の知るところではKPTは、テロや暴動に分類される類の暴力は犯さなかった。
彼らは、"stand your ground" ポリシー(訳者註1) の緩やかな体現者だ。


[写真] KPTによって認証されているであろう黄シャツ。ディンデンの衝突のさなか。ASTV(Asia Satelite Television) は黄シャツ隊と強く結びついている

私の知るところでは、KPTは攻撃的な行動を前もって計画することはないが、防御の為なら戦う。多くのKPTのメンバーは武装しておらず平和的であるが、彼らのうちの護衛たちは武装しており、身を守ったり反撃すら行う。

[写真]  2013年12月26日のKPTの警察への攻撃の際、KPTをサポートする軍隊

私は、2013年12月26日にディンデンにおいて、正当防衛のみならず、その域を越えて反撃に転じるKPTのメンバーを目撃している。

[写真] 傷ついた護衛を手当てするKPTの医療班。彼は格闘で傷ついたのではない。他の護衛と喧嘩になった。

KPTは2014年2月18日にも、同様のことを行ったが、私が到着したのは、その日の争いの後だった。

2月18日に私が着いた時、警察が負傷者とともに退却した後もなお、KPTバンコクの紛争現場に居残っていた。

[写真] ダンマ・アーミーの指導者であるポーティラック師: 非暴力を説く。彼の教団員は何度も攻撃を受けた

その日の朝、平和的仏教徒の抗議者であるサンティ・アソク教団のダンマ・アーミーの、武器を持たないメンバーを警察は情け容赦なく攻撃した。

KPTとダンマ・アーミーが同盟者であるという事実は扨ておいて、警察が祈りの時間(訳者註2) に彼らを攻撃したことを、道徳的に忌むべきことと見たKPTは激昂した。

警察が丸腰の僧侶を殴打した、という話が人々の間に広まった。ダンマ・アーミーのキャンプサイトKPTキャンプサイトは近く、KPTは警察に対して致命的攻撃を与える、という形で素早く反応した。

KPTは、警察の横暴を後ろの方に座ってビデオ撮影するアメリカ人ではない - KPTは警察を撃ったのだ。しかし、これらの背後の要因が全てかき消されているのが、KPTテロである。KPTの口からはいかなるテロ攻撃に関しても聞いたことはない。KPTは、公然と格闘に従事し、一言の謝罪もせず、その功を主張する。しかし、これらのことは、生じる反応の別の形の表現なのである。

丸腰の抗議者たちを、アメリカの警察が情け容赦なく扱っているところを見ていると想像してみよう。KPTと近い反応は、駆けつけた州兵が、警察に発砲して、武装車を押収し、警察の支出として計上する、ということだ。KPTの平和的取り扱い方は、彼らを攻撃しないことだ。

重ねて言うが、その後にKPTが警察を爆破したり、さらなる攻撃に従事していた、という証拠を私は何一つ目にしてはいない。今までのところ、紛争現場に立ち込めた煙が消えると、皆自分のやるべきことに立ち戻って行くのだ。

抗議デモ隊との衝突に関して裁判所は、抗議者の側が先に暴力的な攻撃をしない限り、警察は攻撃してはならないと、布告した。これまでのところ、これは抗議者との衝突を終わらせてきた賢い決定だったと言える。タイで続いている多数で広範な政治的暴力は、もう一度言うが、自らの行為を吹聴する赤シャツ隊、反独裁民主統一戦線の手によるものだ。奇妙なことに、彼らは自らが実行した暴力を公に祝した後でも、誰かが彼らのことを暴力的と呼ぶと怒り出すのだ。

[写真] KPTキャンプサイトの入り口で、制服を脱いで護衛にあたっている本物の兵士

12月26日のディンデンで、軍隊はKPTを援助したが、武器を提供したり彼らの警察との戦いを支援することはなく、水の供給や医療ケア、道義的支援に終始した。このことをもう少しはっきりさせよう: KPTと編成された警察との戦いの熱気のさなか、そこから200メートルも離れていないところに陣取って、軍はKPTを公然と支援していたのである。

もしアメリカ人だったら、米軍の隊員たちの目の前で、警察をダイレクトに攻撃する抗議者があったとして、その抗議者を傍らにいた米軍の隊員たちがが援助しているところを見れば、さぞかし唖然とするだろうなあ----そんな風に考える人もいるだろう。

続く

----------翻訳おわり----------

元記事は以下

註1
Stand-your-ground 法
アメリカ合衆国では、Stand-your-ground 法は次のように述べられる。
個人はいかなる場所からも退去する義務はない
彼/彼女は、その場にいる正当な権利を有する
死や身体に深刻な損傷をうける、差し迫った緊急の脅威に瀕していると、彼/彼女が理性的に信じる場合、致死的なものを含むいかなるレベルの暴力を用いても構わない。(ウィキペディア 英語版)
トレイヴォン・マーティン射殺事件などでも有名になった、日本人には極端にも見えるアメリカの正当防衛法。暴力を受けた場合でも、相手に対して深刻な脅しをしていないと、被害者の側が立証する必要があるらしい。

註2
原テキストでは、pray となっているが、私がサンティ・アソク教団で数日間過ごした経験から言っても、祈りというよりも、詠唱か瞑想のことだろう。ただ実践を重んじるサンティ・アソク教団では瞑想は、それほど行われていない。



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マイケル・ヨン氏はアメリカの人で、独立取材を続けるジャーナリスト、コラムニストであり、また写真家でもある。2008年にNew York Times紙は、マイケル・ヨン氏のことを、最も長くイラクで戦闘部隊に従軍した作家であると紹介している。

日本では慰安婦問題で、公平な報道をする数少ない欧米人ジャーナリストの1人として知られている。

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